第18話 浮遊霊の日常4
「久々にヒーローショウを見るな。こんなのは小学生が見るもんじゃないのか?」
「そう言わないでよ、私は初めてなんだから」
アスカがヒーローショウを見たいというので、とある県の屋外ステージに来ている。休日と言う事もあってか、子供たちでいっぱいだ。まあ、平日にやったとしても子供は学校や保育所に行っているだろうから、人を集めるならやはり休日に限るだろう。
このヒーローショウは、ありきたりな怪獣をヒーローが倒すというやつで、テレビは見てないが、今やると言う事は視聴率がいいんだろうな。
「思ったより本格的なのね。あれは、花火かしら?」
屋外と言う事で、火も使うようだ。特撮なんかでは爆発、煙はよく見るが実際に見るのは俺も初めてになるな。一応、ステージ上だけのセットみたいだが、普通よりも客席が遠くセットされているようだ。火傷対策か?
「あっ、始まったわよ。」
女性司会者が、怪獣に襲われるところから始まった。怪獣は大人が見ればすぐにゴム製の着ぐるみだと分かるが、5歳くらいの子供たちには本物に見えているのだろうか? 司会者の「助けて、ヒーロー!」というセリフを子供たちにも言わせると、全身赤色のヒーローが舞台袖から飛び出してくる。
「この戦闘音やセリフに合わせて動くのって大変そうよねー」
「……せっかくだから、もう少し近くで見るか?」
俺達は観客の邪魔になることは無いので、ステージ近くまで近寄った。すると、怪獣から一瞬「なっ」と言う声が聞こえ、ビクリと震えた気がしたが、ステージ中だという事を思い出したのか、すぐに元の動きに戻った。
「あっ、怪獣の人、私たちが見えるのね」
「まあ、邪魔にならないように大人しくしとけよ」
俺達は気持ちだけステージから離れた。ショウはそろそろ佳境に入ってきて、ヒーローが必殺技の構えを取る。
「食らえ! ヒーロービーム!」
赤いヒーローのセリフと共に、舞台の花火に点火される。結構派手に火の粉がステージに降りかかる。
「ぎゃあぁ、やられたー」
怪獣がフラフラと歩き、花火の前に倒れこむ。
「あれ、マズいんじゃない?」
「マズいな」
アスカが心配した通り、花火がゴム製の着ぐるみに燃え移る。ゴムだからか、あっさりと火に包まれる。
「ぎゃああ!」
今後は中の人の本当の叫び声が上がる。スタッフが慌てて着ぐるみに消火器をかける。子供たちは「怪獣が死んだ!」と盛り上がっている。ピクリとも動かない着ぐるみを、スタッフが急いで舞台袖に連れている。その間も、舞台と合わないセリフが流れている。俺達はソッと舞台そでに入ると、丁度着ぐるみを脱がせているところだった。
火で溶けたゴムは、中の人の皮膚に付着し、どう見ても全身が焼けただれていて生きていそうになかった。
「……今度は、もっと安全そうなヒーローショウを見に行きましょう」
「これに懲りて無いのか……。まあ、どうせ暇だから好きにしろ」
俺はアスカの好きにさせている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます