第16話 浮遊霊の日常2
「ジャック、いくら私たちに定住する場所は無いと言っても……」
「なんだ、外国は嫌いか?」
俺達はフラフラとアメリカまでやってきた。と言っても、「飛行機に浮遊霊は乗れるのか?」と言うのを試した結果、飛行機に乗れてしまってアメリカに着いただけだ。せっかくなので観光しようと言う事になったのだが。
「これが、バンジージャンプと言う奴ね。私は初めて見るわ」
「俺も初めて見るかな」
大学の卒業旅行で度胸試しにでも来たのだろうか、数人の日本人と思われる女性が順番待ちをしている。
「go jump!」(とべ!)
スタッフの指示によって恐々とショートの茶髪の子が飛び降りる。
「きゃあぁぁぁ」
しばらく落下した後、ゴムが伸びでビヨヨヨヨーンと戻ってくる。そして、再び落下する。それをしばらく繰り返した後、ゴムが巻き取られて茶髪の子が戻ってきた。
「あー怖かった、でも楽しかったわ」
準備が終わり、次のロングヘアの黒髪の子も飛び下りる。それに合わせてアスカもヒューと追いかけて行った。
「幽霊の身だと、面白くないわね。生前やってみるんだった」
「俺達が死の恐怖を味わう事は無いだろうからな」
そう言っているうちに、最後のセミロングの茶髪の女性の番が来た。スタッフがゴムを足にセットしていく。
「何、あなたたち!」
「うん? 俺達が見えるのか?」
「あなたの他にも何かいるの!?」
セミロングの茶髪の子は、きょろきょろと辺りを見渡す。あー、これは俺しか見えていないな。霊感が強いってわけじゃなさそうだな。
その子が挙動不審な動きをしたためか、スタッフがゴムの装着に手間取っている。フラっとセミロングの子が動いたので、スタッフが止める。
「no jump!」(とぶな!)
俺の存在に気を取られていたのか、セミロングの子は「go jump」と聞き間違えた様で、まだゴムがきちんとセットされていないのに飛び降りた。
ヒューッ グシャッ
「きゃああ!」
「うわ、死んだ!」
「まじか!」
「oh my god!」
この惨状に、皆パニックになっている。
「あらら、これはひどいわね。原型を何とかとどめているってところかしら」
「本人は……成仏したみたいだな」
霊感が弱いせいか、アスカと違って幽霊にはならなかったようだ。少し、後味の悪さを感じつつも、他の場所へ観光しに行くことにした。
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