浮遊霊の日常編
第15話 浮遊霊の日常
俺は浮遊霊、俺自身は人畜無害なんだが、生前からよく事件に巻き込まれる体質だった。そして、死が近づいている人間には俺の姿が見えるらしい
「ちょっと、そこどいてー!」
派手な茶髪に染めた女性が走ってくる。俺の事を避けようとしてそのまま突っ込んできた
「って、いったー。どいてとはいったけど、ほんとに避けないでよ!」
女性は俺が幽霊で、体を貫通した事には気が付いていないらしい
「はっ、こんなことをしている場合じゃなかった!」
女性は慌てて立ち上がると、走り去っていった
「待ちやがれ!」
その女性を追いかけるように、2人のスーツの男が走ってきた。男達は、どうみてもカタギではなさそうだ
俺は面白そうだと思ってついて行くことにした
女性はスポーツでもやっていたのか、結構身軽に障害物をよけ、男達と距離を離していく
「はあっ、はぁ……くそっ」
男は、女性を見失うと近くのごみ箱を蹴飛ばした
「ちくしょう、やっと見つけたのに。今日中に借金を回収しねーと兄貴に怒られちまう」
女性は借金取りから逃げていた様だな。物理的に逃げたところで、いつかは捕まるだろうに
俺は女性の方について行った
「何よ? あんたもあいつらの仲間なの?」
女性は警戒するように俺から距離を離す。俺が浮いている事にも気が付かないのか?
「あっ、見つけたぞ!」
すると、さっきの男達も追いついてきたようだ
「やっぱり仲間だったのね!」
女性は近くのマンションの非常階段へ逃げた。そんなところに逃げると、逃げ場を失うぞ?
しかし、女性は慣れているのか、手すりを越え、あっさりとマンションの廊下まで逃げる
「逃げ足の速いやつめ! だが、そっちからは逃げられんぞ」
男の言う通り、もう一人の男が回り込んで玄関から登ってきている
「甘いわね、こっちが空いているわ!」
女性は、2階の廊下から下へ飛び降りた
グサッ
2階からは見えづらいが、マンションには鉄の柵があったようだ。それも、先が槍の様に尖っている
女性は胸をその柵に貫かれて死亡したようだ
その後は、男たちは慌てて逃げて、音に気が付いたマンションの住人によって救急車が呼ばれる
即死だと思うが、女性は一応救急車に乗せられていった
「よう」
「何よ、あんた幽霊だったの」
「そうだ。見ていて楽しかったぞ」
「悪趣味ね。まあ、いいわ。私もまだ成仏できないし、あなたについて行くわ。私の名前はアスカよ」
「俺は……ジャックとでも呼んでくれ」
「分かったわ、ジャック。幽霊の先輩!」
アスカはそう言って俺の肩を叩く。俺も暇をしていたところだから、暇つぶしには丁度いいだろう
幽霊には寝床なんてない。俺達は自由だ
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