青と灰色

翌日早朝。

aが庭へ出るとKが飛んで来た。

Kがこんなに早起きをするとは…

「おい、おいマスター」

「………フェニックス君。Kは?」

「寝てる」

やっぱりか、と納得する。

フェニックス君はそっと芝地へ着地し、aに顔を寄せた。

「こいつ俺ん中に入れとくと危ねぇんだけど、多分」

「? なんで? K何かするの?」

Kの容量が大き過ぎるとか、そういう事かと思ったのだがどうやら違うらしい。

フェニックス君は軽く首を振った。

「違う。俺じゃなくて、こいつが危ない」

理解できず、aは無言で先を促す。

「俺達は玄獣だから、契約者の精神力って言うか、気力?そういうのを使って生きてんだよな。つまり飯。だから、精神体そのものの霊体を側に置いとくと、いや、体内なんかに入れとくとだな、こぅ―――」

「ぁあ、解った、解った。成程ね」

言い難そうになっていくフェニックス君を遮ってaが言う。

「でも身体無いと危ないんでしょ? あと気軽に魂受け入れてくれる器なんて…」

「………」

少し考えてからフェニックス君が口を開いた。

「…んー、マスター出来んじゃねぇ?」

「あたし!?」

「おう。術使う要領で」

「え~、やだよ」

フェニックス君はまた暫らく考えて、

「あと…あの男もいけるかも、…知れないけど…、……どうだろ……」

「あの男って…シール?」

「灰色い方」

「ふーん。意外な特性」

適当に聞きながら、aはまた青と灰色を見つけていた。

Kとシールの瞳の色は、青と灰色だ。


「って事なんだって、K」

今朝の会話をKに伝える。

シールは今朝もお仕事で忙しい。

「……じゃあさ、ウチはペファンちゃんの中に入ってるから、ふたりでウチの身体取り返しといて」

言うや否や、Kは何処から取り出したのか、小さなビー玉サイズの、陶器のゾウの模様の描かれた珠の中へ消えた。

呆気にとられたaは口を開いたまま、地面に転がった白い珠を見つめていた。

それを拾って『穴』へしまってから、呆然と呟いた。

「何か…してやられた気がする…」


「って事なんだって、シール」

先程の話を話をシールに伝える。

「………放っておくか?」

「冗談に聞こえないよ…」

ふたりは疲れ果てた様子で、思い思いに机に突っ伏した。

「諦めてくれるなら好都合だね」

「何K身体………」

aは気付いて直ぐに戦闘態勢をとった。

「おまえッ」

『K』に掴み掛かろうとした瞬間―

「!!」

猫!

耳鳴りに耳を押さえながら周囲を見回すと、同じく苦しんでいるシールの向こうに黒猫は居た。

「こ……っの!」

aが近くのペン立てを投げつける。

途中でこぼれたペンがシールを襲うが、本体は猫めがけて飛んでいく。

黒猫はまたしても優雅に身を躱し、消えた。

見れば『K』も居なくなっている。

舌打ちして姿勢を正そうとして、何かおかしい事に気が付いた。

慌ててシールに目を遣ると、案の定、変化が起こっていた。


まったく…

動物の次はこどもか!!

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