金の鬣と緑の眼

「つまりあの黒猫は何だったのかって事だよね」

方耳をピルピルさせながらKが言う。


「ブカフィ」


「うわびっくりした」

突如現れた人物に場が凍る。

長い紫の髪に金の瞳を持つ長身の男性は、本人にその気はなくとも周囲を威圧する雰囲気を纏っていた。


「貝空。急に出て来ないで。しかも人型で…」


貝空はKの使役する召喚獣だ。

元々はセフィロートの存在で、十年前から従えている。


「貝、空…?」


本来は二枚貝のようなフォルムをしているが、その状態で声を伝えられるのは主であるKのみらしく、aや他の人へ言葉を伝えようとする時は人型をとる。

シールは人型の貝空を見るのは初めてだったか、目を見開いて固まっている。


「で、ブカフィ?なに?」


主の言葉に、貝空はちらりとシールを見た。

貝空の出現で固まっていたシールは、視線を受けて肩を揺らしたが、その意図を解し口を開いた。


「あー、鬼神だ。魔女の鬼神、といわれている」


へぇ、とシール教授の講義を受ける異邦人2名。

グールは相変わらず意欲的ではない。

恐らくこいつらと関わると碌な事が無いと心底思っているのだろう。


「詳細は…あまり知らん。偶ーに現れる。その程度しか」


シールにも知らない事があるのか、と妙に感心してしまう。


「じゃ、これ、何なのかね?」

Kが新たに生えた獣耳を軽く引っ張りながら誰にともなく尋ねる。

その魔女の鬼神が現れたとして、何故こんなことになったのか、全然解らない。


「それは呪いだ。何故そんな形で現れたかは解らんが。ブカフィに操られんよう注意しろ」


端的な貝空からの忠告に頷いて、


「―え?操られ…?」


不穏な単語に気が付いた。


「呪われた者は呪った者からの干渉を受け易くなる」

「か、解呪は…」

「鬼神直々の呪いなんか、前例がない。知らん」





その後、シールの権限で用意できる色々な解呪法を試してみたが、どれひとつ効果は得られなかった。

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