自宅警備犬

外は寒い

でもずっと家にいるより

寒くても外で駆け回りたい



今日もご主人は仕事

今日も僕はご主人の家を守る

車で職場に向かう

それを見送ってから僕のルーティンの始まり

いつもの窓辺に座る



今日も小学生たちがぞろぞろ並んで

学校ってところに行くんだって

学校って何するところなのかな?

またあのおじいちゃんが僕を見てる

何が目的なのかわからないから

用心のために吠えた

おじいちゃんはいなくなった

僕は本当に仕事ができる



しかし、

そうそう問題って起きない平和な日々

僕も外で遊びたいなあ

でも僕は一匹で遊びに行けない

犬が外にいて、首輪がないと

ほけんじょ?って所に連れていかれるんだって

そこに行った僕の仲間たちは

檻に入っていた

でも猶予はないんだって

猶予ってなんだろう

でも僕は自由に歩き回りたいから

暇でも檻に入れない

ご主人の元にいた方が合ってる


あの犬は毎日飼い主と遊んだり散歩してる

いつもにこにこして楽しそう

ふん、

僕はお前と違って

遊んでいる暇なんてないし

ご主人に家の警備を任されている

お前なんかより僕の方が仕事ができる犬だ

だからご主人の信頼は厚い

だから、お前のことなんて

ちっとも羨ましくなんてない

僕には必要が無いことだ



日があたたかい

眠くなってきたなあ



「今日は犬寝ているよ」

これはお向かいに住んでいる男の子の声

犬が珍しいのか

いつも僕に向かって手を降ってくる

僕の家に入れたくない

だから吠えた

「今日も元気だね」

何ともないようだ

次は吠えながら突進した

透明な何かにぶつかって

バァン、バァンと音がする

少し痛い

「ごめんね。いきなりはこわかったよね」

男の子は後ろに下がった

でも僕は威嚇をやめない

威嚇をやめたら負けな気がした

「痛いからもうやめた方が……そうだね。僕が悪かったよ。またね」

そう言って

家に入っていった

男の子は逃げていったんだ

僕は本当に仕事ができる

これだけ頑張って家を守ったんだから

きっと褒めてくれるよね



「ただいまー」

ご主人が帰って来た

体がまた重いけど

そんなのを忘れて一目散に駆ける

今日もいっぱい撫でてくれる

嬉しいなあ

ご主人は僕のふわふわした白い毛が

好きなんだって

僕もたくさんかまってくれる

ご主人が大好きだ

今日もいっぱい働いたんだ

褒めて褒めて






「あの犬の飼い主さんいつ散歩に連れていくんだろう……」

「さあ、小型犬なら頻繁に連れていかなくてもいいみたいだからね」

「でも、あんなに太らせたままじゃ足腰が弱っちゃうよ……いくら可愛いからといっても、いつまでも閉じ込めておくなんて……」


「今度、飼い主さんとお話をしましょう。家庭の事情もあるし、駄目そうなら他の誰かに相談に行きましょう。可愛がっているみたいだし私たちが首を突っ込みすぎるのは良くないわ」

「そうだけど……」

「今は今の段階で出来ることをしましょう」

「わかった……」



ある男の子の話





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