あの輝きは届かない

届かないとわかっていても手を伸ばす

見つめ続ける

いつか私のもとに落ちてこないかと

待ち続けている


星を食べた人間は何もかもを忘れるんだって

ただのお伽噺だった

誰も星を食べたことがないのに

そんな話だけは生き続けていた


金平糖

砂糖を大事に大事に育てて

星の形に形成されたお菓子

砂糖の甘味で口の中が支配される

口の中で転がしていたら

星を形成していた

つんつんと丸く可愛らしい角が取れる

そうしてただの欠片となって

私の中の吸収された



金平糖を食べても

何もかもを忘れることはなかった



それはそうだ

あれはただのお伽噺

たとえ忘れたいことがあっても

はい、さようならなんて

人間には出来ないのだ


外は刺すような冷たさだった

手足の感覚はあまりない

息を吐いて温めようとしても

そこから冷めていく

でも星は綺麗だった


冷たい空気だからこそ澄んでいる

誰もいないからこそ

普段は見えない小さな光まで見えた

小さな星も私を見てというように輝いている

あんなにあるのだから

私にひとつぐらいくれないだろうか


乾いているのに

目から何かが出てきた

とっくの昔に枯れ果てたと思っていたのに

止める術を私は持っていなかった



いつもあの人が止めてくれていたから



星の話をよくしてくれる人だった

春も、夏も、秋も、冬も

全ての季節の星の話や

神話の話を聞かせてくれた

でも

あの人は星に連れていかれてしまった



あんなに愛していたものになれた

あの人は幸せなのだろう

この世界に飽きて星になってしまったあの人



置いてきぼりにされた私は

星を求めた

その時に、そのお伽噺を聞いた

それでもいいと思った

あの人は輝く光となり

肉体はなく

手の温もりも

ミルキーウェイのような光を持つ眼差しも

永遠に喪われてしまった



そんな世界こそが

私にとっての死だった



ああ、神様

なぜあの人を殺したのですか

なぜあの人を私から取り上げたのですか

なぜあの人を星にしてしまったのですか

そんなものは何の慰みにもならない


ただ一緒にいられるだけで幸せだったのに

それ以上は何も望んでいなかったのに

どうしてなのですか

なぜあの人でなければいけなかったのですか



お願いです

どうか、どうか、

私にあの人をかえしてください



それが叶わぬのなら

あの人の星を私にください

全てを咀嚼して

あの人の存在も

あの人を愛していたことも

何に訴えていたのかも

全てを忘れて

生きていきます

いえ死んでも構いません



ですから、どうか


地に堕ちた私にあの輝きを

私の唯一をかえしてほしいのです




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