耳鳴

ジーッジーッ、ジー、ジージーッジ


いつから聞こえるようになったのだろう

気にしなければ聞こえない音が


病気にしては軽い

重い病気が隠れているサインもあるらしいが

私は軽いものだった

いずれかは治るもの


原因はわかっている

わかっているが

改善するには時間が掛かる

いや、すぐかもしれない

もっと時間が掛かるかもしれない

一生付き合うことになるかもしれない

そんな曖昧なものだ


宙ぶらりんな思考

どっちつかずな存在

からだの悲鳴

いつかは消えるはずの音


耳に痛みはない

しかし、別のところが

じくじくと疼くように痛い

ちくちく優しくつつかれるように締め付けられる痛み

がんがん殴り付けられるような痛さ

泥のように静かに横になりたい


ジー、ジーッジー、ジー、ジーッ、ジーッ


これはモールス信号

信号の内容はデタラメ

デタラメなまま何かを伝えようとしている

叫びをあげられない何かの代わりに

気付いてほしくて届けようとするエナジー

エマージェンシー、エマージェンシー

聞こえますか?聞こえますか?


ジーッ、ジーッジージーッジー、ジー




エマージェンシー



聞こえますか?

聞こえているなら返事をしなくても

これだけは聞いてほしい

自分を労って

自分を否定しないで

自分の頑張りに卑屈にならないで

もう頑張らなくていいよ

もう充分頑張った

誰も見てくれなくても

気付いてくれなくても

わたしだけはわかっているよ

つらかったね、苦しかったね


でも、

もう頑張らなくていいよ

君の価値も存在も

意味のないものじゃない

君の努力が今は報われなくても

日の目を見る日は必ず来るから

それが

生きているのか死んだ後なのかは

わからないけど

自分の努力を否定しないで

自分を追い込まないで

君の頑張りは自分を強くする糧になる

君の生きていた時間は無駄じゃない

だから早く自分を労って

早く気付いて

早く、早く、手遅れになる前に

自分の信号に気付いて



ジー、ジー、ジーッ、ジーッジージーッジー


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