優しい色

それは青、緑、黄色、白、桃色……

人によって違う優しい色


出会う前の僕の世界は

白黒で

どんなに色を乗せようとしても

真っ黒に塗り潰された

笑い声が聞こえる

それは嘲笑う声

それは迫害の声


そんな日々に疲れ果て

元いた場所から逃げるように

違う場所に来た

全く知らない場所

真っ白な人間関係

みんな優しくしてくれた、楽しかった

本当の僕でいられた



本当に楽しかったんだ



でも、でも


あの笑い声は

ずっと付きまとってきた

黒い絵の具を水に垂らして黒くするように

僕の心にこびりついてきた瑕

どんなに別の色で塗り潰そうとしても

下から這い出て古瑕を刺激し続ける




誰もお前を好きにならない

生意気だ

地べたに這って泣け

消えてほしい

お前なんか役に立たない

触るな

視界に入るな

声を掛けてくるな



ドス黒い何かが限りなく

溢れてくる

全てを流すように襲い掛かる



苦しい、どうして、



「あなたは何も悪くない」


本当?


「私がなんとかする」


本当に?助けてくれるの?



手にした通知書には

「協調性がない」と

書かれていた

何とかするって嘘か

僕がやっぱり何もかも悪いんじゃないか

信頼も何も、

誰も僕を救えない

僕の存在が1番悪いんだ

僕なんて……


だれか、だれか、たすけて



「何故、自分を卑下するんだ?」


何故って、僕はみんなより劣っているから


「どうして?俺にはそうは見えない」


いつも僕はダメなんだ

後ろ指を指されたし、

僕は何もかも不完全なんだ


「それがなんだ。当たり前だろ」


当たり前じゃないよ


「何言っているんだよ。じゃあ後ろ指指した奴らは何でも出来るのかよ?」


知らない。

でも、少なくとも僕よりは優れてる


「そうかあ?俺にはそいつらが何も出来ない奴らにしか見えないね」


なんで?


「なんで?だって?お前は大馬鹿だ」


ひどい


「だって、お前を出来ないやつなんて決めつけることが間違いだ。それを鵜呑みにするお前の考え方が大馬鹿と言わず何て言うんだ」


だって、僕は…


「そうやって卑屈になるな!」


え?


「俺はな、お前のことスゲエって思っているんだよ。お前の行動を見たからしっているんだよ」


え、何それ?


「自覚が無いなら言うけどな、お前は努力は怠らないし、やることもビシッとする。弱っているやつがいればさりげなくてを差し伸べられる気概があるし度胸もある。そんなお前が何も出来ないやつなわけないだろ」


そんなじゃないよ…


「お前は自覚ないだろ。俺から見たお前なんだから。俺はお前をかっているんだ。お前の評価じゃない俺の評価だ。自分で自分の価値を落とす必要はないし、そんな奴らは放っておけ」


あっちが絡んでくるんだよ


「おっ、その意気じゃん。自分の評価を自分で落とすなんて損だろ?勝手に他人がつけた評価なんてくだらねぇ、お前はお前でいいんだよ。この気遣い屋」



ありがとう



「泣く前に、その悪癖をなんとかしろよ」




こんなことを言われたのは初めてだった

みんな自分より下の人間がいることに安心している人間ばかりだったから自分を卑下するのが癖になっていた

終わることのないドス黒い道だった

その道に優しい色を差した友人に恩人に

感謝を



その日から僕は自分を卑下するのを辞めた








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