第5話

「ここがバハルス帝国の帝都アーウィンタールか」


 ヘッケラン達と出会い、話をした日の翌日。俺はこの辺りを治める国、バハルス帝国の帝都へとやって来た。


 昨日、俺は遠くから傭兵をしながら旅をしてきた傭兵という設定で、ヘッケラン達からこの世界について色々と聞くことができた。その結果、この世界はユグドラシルの世界と似ている点がいくつもあるが、違う点も多くあることを知った。


 違う点の中で一番大きいのが、人間を初めとするこの世界に生きる全ての生物の力量レベルだ。この世界の住人はユグドラシルに比べて圧倒的に低いのだ。


 その証拠に昨日ヘッケラン達に見せた「龍電ドラゴンライトニング」の魔法。ユグドラシルではせいぜい初心者か中級者が使うありふれたものなのだが、この世界では使えるのは住人もいない「英雄」が使う魔法だと昨日アルシェが顔を青くしながら説明してくれた。


「ゲームのキャラクターになって異世界に転生……しかも現地の住民は圧倒的に弱いとか……。どうやら俺ってば、一昔前に大流行した『俺様強い』系小説の主人公になったみたいだな。……そうなれば俺がこれからすることは一つ、『冒険者』となることだな」


 異世界転生するラノベで転生先がここみたいなファンタジー世界の場合、主人公は十中八九、冒険者となる。そして実力さえあれば社会的地位が得られる冒険者の世界で、転生特典で得たチート能力で一気に成り上がるのだ。


 幸いヘッケラン達の話ではこの世界にも冒険者や、冒険者組合に属さず報酬次第でどんな仕事もやる何でも屋みたいな「ワーカー」という職業があるらしい(ちなみにヘッケラン達もワーカーだと言っていた)。


「冒険者となって名声を得られればこの世界での生活に色々と役に立つはずだ。……だけどその前に『アイツら』を『出す』とするか」


 そう言うと俺はアイテムボックスから、掌に収まるサイズの小さな棺のようなアイテムを二つ取り出した。


 このアイテムの名前は「小人の棺リトル・コフィン」。使えば味方のNPCノンプレイヤーキャラクターを仮死状態にしてから収納し、アイテムとして持ち運ぶことができるマジックアイテムだ。


 そしてこの二つの小人の棺リトル・コフィンには俺が製作したN P Cが二人入っており、俺はここでその二人を外に出した。すると俺の目の前に、従来のメイド服をエロくて可愛らしいデザインに改造したメイド服を着用した、髪の色が金色と銀色である事以外全く同じ容姿のメイドが二人現れた。


『『おはようございます。ロボ・バイロート様』』


「ああ、久しぶりだな。シャルロットにシャイン」


 二人のメイドは全く同じタイミングでお辞儀をして口を揃えて俺に挨拶をしてくれて、俺はそれに満足気に頷いて挨拶を返した。


 金髪のメイドはシャルロットで、銀髪のメイドはシャイン。二人とも俺と同じホムンクルスで、同時期に作られた双子という設定だ。


 ……それにしても火力コソ正義八号を実際に見た時も感動したが、現実のものとなって俺に挨拶をしてくれるシャルロットとシャインを見るのもまた感動するな。


 シャルロットとシャインは、数年前に自分のキャラクターの名前と外見でブラックジョークをする黒い粘体の知り合いが「これが私の自慢の子なんですよ〜。私好みの美人でしかも私と同じ種族。羨ましいでしょう?」と、ドヤ顔で自分が製作したNPCを紹介してきてイラッとしたのきっかけで製作したNPCで、それならば俺もと自分の好みの外見にしたのだ。


 シャルロットもシャインも、俺が一番気に入っているエロゲのヒロインを参考したその外見は素人が作ったにしてはかなりのモノだと思う。特にこの巨乳と小柄な体のバランスは我ながら会心の出来だ。


 俺の永遠の宿敵であるエロゲに命をかけているバードマンは「ロリで貧乳こそ至高。巨乳? あんなのただの脂肪じゃないですか?」と目を開けたまま寝言を言っていたが、俺はそんな妄言は絶対に認めない。


「寝ているところをいきなり起こして悪かったな。実は今、俺達はかなり奇妙な状況にあるんだ」


 俺はそう前置きをするとシャルロットとシャインに今の状況を説明するのだった。

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