第4話

 音がする方に来てみると、そこで見たのは百を超えるアンデッドの大群と、それと戦う四人の人間達。リアルで見るスケルトンやゾンビは、ゲームのユグドラシルで見たそれ以上に不気味であったが、それ程嫌悪感を抱くことはなかった。


 おかしいな? 俺はホラー系は苦手なはずなのに、ロボ・バイロートになったことで感性が変わったのかな?


 それはとにかく、アンデッドの大群の方は明らかに野良のモンスターみたいだし、この世界の情報を得るには四人の人間の方がいいと判断した俺は、アンデッドの大群に向けてガトリングガンを発射した。するとガトリングガンが放たれる無数の魔力弾は、呆気ないくらい簡単にアンデッドの大群を一掃していく。


 俺が今使っているガトリングガンは神器級ゴッズの高威力の銃なのだが、それにしても簡単すぎる。どうやらあのモンスターの大群は、数だけで低レベルのモンスターしかいないみたいだ。しかしそれだと何故あの四人の人間達はあそこまで苦戦しているのだろう?


 だけどこうして圧倒的な火力で敵を次々に倒していく光景はやっぱりいいな。見ていてスカッとする。やっぱり最後にものを決めるのは火力だよね。つまり火力こそ正義。それが真理だ。……ん?


 何だ? 今、「それは違う」と首を横に振る純白の鎧をきた聖騎士と「やれやれ、分かっていませんね」と肩をすくめている仮面をつけた悪魔の幻が見えたと思ったんだが……気のせいか?


 まあ、いいか。それより今はあの四人の人間達からこの世界の情報を聞くのが先だ。




「いや~、本当に助かったぜ。ありがとうな」


 それからしばらくした後、俺はアンデッドの大群から助けた四人の人間の一人、ヘッケランから礼を言われた。


 今、俺とヘッケラン達は日が暮れてきたので、このカッツェ平野で野営することになった。


「別に気にしないでくれ。あれぐらい大した事はないよ」


 実際本当に大した事じゃなかったし。いくらなんでもあのアンデッドは弱すぎである。見た感じレベルは十前後といったところか? あんなの何千何万いても俺と火力コソ正義八号の敵ではない。


 そう考えながら言うと、ヘッケランとその仲間達は驚いた顔で俺を見てきた。


「あれだけのアンデッドの大群を瞬殺しておいて大した事はないって……」


「いやはや、凄い人ですね」


「うん。それにあの鎧……」


 ヘッケランの仲間、イミーナとロバーデイクがそう言うと、続いてアルシェが何かを恐れるような目で火力コソ正義八号を見る。


「あの鎧からは信じられないくらいの力を感じる。……あの、ロボさん? 貴方はあの鎧をどこで手に入れたの?」


「あれか? あれは俺が作ったんだよ」


『『作ったぁ!?』』


 俺が答えるとヘッケラン達四人は声を揃えて驚き、アルシェが信じられないといった表情で首を激しく横に振る。


「あ、あり得ない! さっきも言ったけど、あれには信じられないくらいの力……魔力を感じる。だけど貴方には魔力が全く感じられない。そんな貴方があの鎧を作ったとは考えられない」


 魔力が感じられない? もしかして俺に気づかれないように感知系の魔法でも使ったのか? ……あの程度のアンデッドの群れに苦戦するような初心者だけど、初対面の相手の情報を得ようとする基本はできているみたいだな。


 俺はアルシェの評価を上げると同時に、彼女が俺から魔力を感じられないと言った理由に思い当たり、その疑問に答える事にした。


「それはこの指輪のせいだな」


「その指輪は?」


「この指輪は所有者のステータスを隠蔽してくれるマジックアイテムだ。その証拠に……」


俺は両手の指全てに何らかの効果を持つマジックアイテムの指輪をつけている(ユグドラシルの上級者なら常識だな)。その中で右手につけている指輪の一つをアルシェに見せてから答えると、右手を天に向けて魔法を使ってみた。


「『龍電ドラゴンライトニング』」


 俺が魔法を発動した瞬間、右の掌から電撃の龍が空へと昇っていった。


 俺はアルケミストのクラスを修得している。アルケミストは生産系のクラスなのだが、アルケミストの技で生み出したものを組み合わせた応用という設定で魔術師ウィザードが使える。まあ、その代わりに威力は本職の魔術師ウィザードに比べて弱いし、クラスレベルを最大まで上げても第五位階の魔法しか使えないんだけどな……って、ん?


『『…………!?』』


 俺が「龍電ドラゴンライトニング」をヘッケラン達四人は、全員大きく口を開けて腰を抜かさんばかりに驚いていた。


 コイツら、何でこの程度の魔法でそこまで驚いているんだ?

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