第3話
「さてどうするべきかな……」
俺は金属同士がぶつかり合う音や人の怒鳴り声が聞こえてくる方を見ながら呟く。
今だに信じ難い話だがここはゲームのユグドラシルではなく、現実の世界のようだ。そんな世界でいきなりゲームと同じノリで戦いをする気は俺にはない。
しかしラノベの知識によれば異世界に転生して最初にすべきことは、ここがどの様な世界なのかを確認することだ。そう考えればここは危険を覚悟で行ってみるべきかもしれない。それに……。
「お前と一緒なら大丈夫かな? 火力コソ正義八号?」
俺は自分が心血を注いで作り上げたパワードスーツ、火力コソ正義八号を見上げて話しかけた。
それに、俺の心のどこかにこの自分の自信作であるパワードスーツを実際に着て、その力を試してみたいという欲求があった。
「……よし。それじゃあ行くか」
俺は少し悩んだ後に、戦闘が起こっているであろう音が聞こえて来る方へ向かう事に決め、火力コソ正義八号を再び装着することにした。最初は驚いたが、自分から火力コソ正義八号を使おうと考えると、まるで長年行ってきた行動のように体が自然に火力コソ正義八号を装着していく。
パワードスーツには様々な特殊能力が備わっていて、その中には
「全く! いくら何でも多すぎだろ! これはよぉ!」
一部に赤がはいった金髪の男、ヘッケランは両手に持つ二本の剣を振るいながら大声を上げる。彼が剣を振るう先には武器を持つ骸骨のモンスター、スケルトンの大群の姿があった。
ヘッケランが今いるカッツェ平野は、常に霧に覆われてスケルトンを初めとする様々なアンデッドが多数出現する場所だった。カッツェ平野では常にアンデッド掃討の仕事があり、今回彼は仲間達と共にアンデッド掃討の仕事を受けたのだが、予想を超える数のアンデッドの大群に囲まれていた。
「ヘッケラン! 無駄口を叩いていないで手を動かしなさいよ!」
「しかしこのままではマズいですよ……!」
ヘッケランの仲間であるハーフエルフの女性、イミーナが自分も目の前のアンデッドを攻撃しながら彼に向かって大声を出すが、それに対して胸に聖印の首飾りを下げた男、ロバーデイクが額に汗を流しながら返事をする。
ヘッケラン達がアンデッドの大群と戦闘になってからすでに二、三時間が経過している。アンデッドは一体一体ならそれほど強くないのだが、それでもいくら倒しても数が減らず、このままではヘッケラン達が先に力尽きてしまうのは明らかだった。
「クソッ! おい、アルシェ! お前は逃げろ! お前一人だったら『
ヘッケランはいよいよチームの全滅を覚悟すると、仲間の一人である杖を持った十代前半くらいの少女、アルシェに逃げるように言う。
「そ、そんな……! そんな事、出来ない」
「出来ない、じゃなくてやるんだよ! お前には……何?」
一人だけ逃げることを拒むアルシェにヘッケランが何かを言おうとした時、突然彼らの前に光の雨が降り注いだ。光の雨はその一つ一つがアンデッドの体を貫き、ヘッケラン達を取り囲みアンデッドの大群を瞬く間に掃討していく。
そして光の雨が降り注ぎ始めてから僅か数秒で、アンデッドの大群は圧倒的な力の前に一体残らず殲滅されたのだった。
『『…………』』
ヘッケラン達が突然起こった出来事に言葉を失っていると、そこに空から声が聞こえてきた。
「あんたら無事か?」
「え? ……何だありゃ?」
ヘッケランが空を見上げるとそこには宙に浮かぶ漆黒の鎧がこちらを見下ろしていた。
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