第2話

「………ん?」


 目を瞑ってユグドラシルでの思い出に浸っていた俺は、ふと全身から感じる違和感を感じた。


 何だ? まるで重たくて硬い服を着ているような気がするんだけど?


 違和感を感じて目を開くと、そこは自宅の部屋ではなく霧が立ち込めるどこかの平原で、俺はその光景をモニター越しで見ていた。そして俺はどうやら服の上に鎧みたいなもの着込んでいるようだった。


「……え? ここ何処? というか、俺は何を着て……これは?」


 俺は見覚えのない周囲を見回した後、自分の手を顔の前に持っていくと眼前のモニターに映ったのは、どこか見覚えのある機械の手。


「何なんだ、コレは? 何とか脱げないのかって……おおっ!?」


 俺が呟いた瞬間、急に体……というか着ている鎧みたいなのが動かなくなり、続いて胸と頭部の辺りが展開された。


「俺の声に反応したのか?」


 正直何で急にこの鎧みたいなものが開いたのか分からない。とりあえず鎧を脱ぐ……と言うより抜け出せるようになったので、俺は鎧から抜け出してからその鎧の方を振り返り……そして思わず驚き絶句した。


「………!? こ、これは……!」


 俺がさっきまで着ていたのは、身長が三メートル程ある漆黒の鎧で、この鎧には見覚えがあった。というよりもついさっきまで見ていたものだ。


「……か、『火力コソ正義八号』?」


 火力コソ正義八号。


 それは俺がユグドラシルで作ったパワードスーツで、つい先程ユグドラシルが終了する時まで、ゲームの中の俺はこのパワードスーツを着てモンスターと戦っていたのだ。


 この日本の甲冑と西洋の全身鎧を合わせたようなデザイン。背中にある、バックパックのサブアームと胸部から伸びているケーブルで機体と繋がっている二丁のガトリングガン。間違いなく火力コソ正義八号だ。


 ……え? 名前がダサい? 別いいだろう、分かりやすくて! それに知り合いにいる見た目骸骨の死霊魔術師に比べたら俺なんかまだマシなネーミングなんだからな!


「火力コソ正義八号がここにあるってことは……?」


 俺はある可能性に気づいて自分の体を触ったり見てみたりした。すると予想通り、今の俺は上下共に黒の軍服を上着を開いた状態で着て、顔には「面頬」という日本のマスクのような防具をつけていた。


「俺……ロボ・バイロートになってる……?」


 火力コソ正義八号が目の前にあるからもしかしてと思ったけど、本当にユグドラシルでのアバターになっていると分かると驚かずにはいられなかった。


 これってもしかして昔、家にある文献ラノベで読んだ、ゲームのキャラクターに異世界に転生するってアレか? 確かあの手の話に登場する転生者って、行動次第ではハッピーエンドにもバッドエンドにもなるんだっけ?


「……どうしよう? こんな事になるんだったら、もっと熱心にラノベを読んでおくべきだったかな? ……ん?」


 俺がほとんど現実逃避する気持ちで馬鹿な事を呟いていると、何処からか金属と金属がぶつかり合う音や、人の怒鳴り声が聞こえてきた。


 ……まさかこれって、異世界転生モノでお馴染みの、転生直後に戦闘に巻き込まれるイベントだったりするのか?

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