かみのへそ
「私の友達を''言葉''から救ってほしいんです」
閑散(かんさん)とした事務所に、若い女性の声がそう響いた。
奇妙な依頼を告げたその客に訝しそうにしながらも、助手のももがお茶を出す。
カップのチリンという音が弾けた。
「ご友人を''言葉''から救う、ですか?」
「はい」
凛とした目でこちらを見つめるその女性は、ハッキリとした声でそう言った。
その瞳から、今しがたの言葉が冗談でも聞き間違いでもないことが分かる。
窓の外は雨だった。
風が薄ら寒く、灰色の空たちが、溜まりたまった雨粒を、楽しそうに地上へと降りしきらせている。
というより、またこんな客なのか。
数時間前から嫌な予感がしていたんだ。
流石に探偵をやってるだけのことはある、俺の勘も鋭いものだな、と今朝に思い馳せるのであった。
朝は眠いと本当にいつも思う。
いつもの時間の朝七時。
煙草を吸いながらコーヒーを飲み、深々と椅子に座って、天井を見上げていた。
天井には黒い靄(もや)のような模様ができている。
一瞬人の顔にも見えたが、おそらく咥え煙草の煙が、天井を擦って出来た汚れだろう。
じゃなきゃきっと呪いか何かだ。
そういえば、今日はもう吸い続けて、これで四本目になる。
まだ事務所を開けてから一時間と経っていない。
これじゃ、ヘビースモーカーまっしぐらだ。
「ねぇ」
「おん?」
「お客さん来るってよ、さっき電話もらった。十時には着くって」
「マジかよ、やったじゃん」
事務所は閑散としていて、いるのは助手のももだけだ。
探偵稼業も楽ではない。
ここのところ、客が来なさすぎる。
事務所に客の足が通ったのも、二日前が新しい記憶だ。
余りの繁盛のしなさからか、部下たちも辞めに辞めていって、今ではいるのも、ももくらいになってしまった。
というのも、最近がおかしいのだ。
探偵なんて、人の不幸で飯を食う仕事にも近い。
昨今は、例のパンデミックで人々が不安に駆られているからか、ほんの少し前までは依頼者も多かったのだ。
望んだわけではないが、うちの探偵事務所は新聞やテレビにも載ったことがある。
それほどには元々から少しは名のある探偵事務所で、客の入りはいい方だった。
しかし最近は違っていた。
来る人数も少ないことながら、どうも舞い込む依頼内容が変なものばかりしかない。
『落とした水を探してほしい』なんて依頼もあったがそんなものはまだかわいいもので、この間なんて『明日が何曜日なのか調べてほしい』なんて意味もわからない依頼もあったくらいだ。
精神的に皆おかしくなっている、ということだろうか?
だが、それにしたっておかしな客ばかりが来て、正直辟易(へきえき)していた。
「んじゃ、準備するかー」
「うわ、その煙草めちゃめちゃ臭いじゃん。不味くないんそれ?」
「前来た客のお礼で貰ったやつ。知らん銘柄だわ」
「味は?」
「ゲロの味」
なら私らと同類やんおいちいおいちい、と、ももがそう言った。
実際生活自体もゲロみたいなものだった。客が来ないから収入もない。なんなら今日の生活費も困窮してるくらいだ。
こんな生活は、探偵稼業をしていて初めてである。
最近何をしても妙に疲れるのもあって、あまりやる気も起きなかった。
「あ、そいえばさ、前もらったこの白秋全集ってやつ、どうする?」
資料室の奥の方から、ももが大きな本を持ってきた。
白秋全集。北原白秋の全集だったか。
確か有名な詩人だったはずだ。
かなり前に依頼者からお礼として貰った品だった。
その依頼者は大学の教授をされている人らしくて、思い出の品としてそんなチョイスにしたんだとか。
「それは処分しよ。古本屋にでも売りにいこ」
「んじゃこっちの手帳は?」
それも別の依頼者からの品だ。
かなり古びていて年季を感じさせる黒手帳。
刑事をされている人らしく、昔その手帳を懐にいれてるお陰で、犯人が振るったナイフが刺さらずに済んだんだとか。
そんな経緯からお守りの意味と、あとはなんだったか思い出の品……だったかな、を込めてお礼として渡してきたものだった。
「それも処分、ゴミ捨て行き」
「んじゃこのぬいぐるみは?」
それもまた別の依頼者のお子さんから貰ったやつだ。
おそらく猫だと思われるが、いかんせん形が崩れていて、もうなんの動物なのかも分からない。
少し見た目が不気味で、片目が取れていた。
これも……思い出の品……とかで貰ったんだかな。
というか、うちに思い出の品を送りすぎだろう。
思い出も不法投棄されて、今ごろ頭にきてそうだ。
「それも処分、ゴミ捨て行き」
「んじゃ、この太鼓は?」
「それはー……え、そんなん貰ったっけ……?」
窓の外は曇天だ。
今日来るというその客も、変なものを舞い込ませるとしか思えなかった。
理由などないが、けれど直感よりも確実な予感があった。
あぁ、なんともやる気が起きない。
閑散とした事務所を見渡すと、前まで部下たちが座っていた椅子たちが寂しそうに見える。
隣を見やると、資料室を整理しているももの後ろ姿が見えた。
ここの事務所も随分広くなった。
また窓の外を見る。
空は一面の灰色に染まっていた。
もうすぐ大雨にもなりそうだ。
一度事務所に入れば易々とは外に出る気にもなれないだろう。
頑張って依頼を取るか、と少し思うのであった。
「言葉から救うとは、一体どういった依頼でしょうか?」
そんな今朝方の記憶も明後日の方向に投げ飛ばし、依頼者へ俺はその依頼内容について問うことにした。
「知らない言語で困っているとか、または事故で言語能力を損なったことで起きた事件ですとか、そういった類いの依頼ですか?」
「いえ、そういうのではなく」と客が遮ったあと「実は」と続けた。
「奇妙な話なんですけど、私の友達……夢に出てきた言葉に苦しんでるんです」
夢に出てきた言葉?
なおのこと、謎が深まってしまった。
「すいません、説明が前後してしまって、全部ご説明します」
申し訳なさそうに、頭を伏せてそう告げてきた。
混乱させてしまったことに謝っているのだろう、なんとも真面目な子なんだなと思った。
「はい。よろしくお願いします」
静かにその女性は話し始めた。
「私大学生で、その友達も同じ大学に通ってる子なんですけど、その子、文芸部に所属しているんです。
「文芸部には、一年に何度か冊子を作る機会があるらしくて。その度に、部員の誰の作品を冊子入りさせるかを決めるために、部内でコンテストを行うそうなんです。
「コンテストは詩か小説を選べるんですが、私の友達は小説部門の方で何度も挑戦してるみたいで。
「ただまだ冊子に載ったことないようで…。今年こそは、とよく言っていました。
「それで、一ヶ月ほど前ですか。今年のコンテストが始まったらしくて、だんだんと連絡も減っていって、私はその姿を、頑張ってるんだなぁ、としか思ってなかったんですけど……。
「二週間ほど前に、その子から突然連絡が来たんです。少し聞きたいことがある、とだけ一言。その子、同じ学部の子たちからも、あまり校内で見かけなくなってるって聞いていたので、以前から気にはなっていたんです。それでその子の家に向かったんですが……。
「そしたら、その……。
「家が……ゴミ屋敷になっていて……。
「玄関周りには本や資料が無造作に散らばってて……電灯の明かりも淡く滲んで、一人暮らしはズボラな人は散らかるとは聞きますけど、およそ人が生活してなさそうな雰囲気で溢れていて……その部屋の奥の方にその子が倒れていたんです。
「何かあったんだと思って、すぐにその子のもとに行って、声をかけました。
「そしたら突然しがみつかれて、こう言ったんです。
「''かみのへそ''って言葉の意味を知らないか、って。
「話を聞いてみると、ずっと小説を書いてるうちに、夢の中でその言葉が出てきたって。その言葉の意味さえ分かれば、私は絶対にコンテストで一位になれるって。
「だからずっと探しているのに、どこを探しても見つからないから貴女にも聞きたかったの、って……。
「何か知ってることでいいから教えてって言われたので、なにも知らない、というと、癇癪を起こしたみたいに突然叫んで頭をかきむしって暴れだして……。
「部屋の惨状から見るに授業も私生活も置き去りにしてる様子だったので、そんなことより授業とかはどうしたの、って聞いたら
「そんなことよりってどういうこと、私には今は''かみのへそ''の方が重要なの、なんでもいいの、教えて、って詰め寄られて……。
「そんな言葉は知らないし、夢に出た言葉なら意味なんてないよ、私もたまに夢で変な言葉とか見るけどなにも意味はないよ、って言っても
「そういうのとは違う、''かみのへそ''はどこかにちゃんとある、ってもっともっとすごい勢いで迫られたんです……。
「あまりの剣幕とその姿に、病院に連れていこうとしたんですけど、全く動かなくて……話も聞いてくれなくて……。カウンセラーの方をお呼びしても、どの方でもどうにもならず……。
「…………その子、すごくいい子なんです……。いつもは、気配り上手で、真面目で人に当たることなんてないのに……。
「まるで''かみのへそ''って言葉に囚われたみたいに……躍起になってしまって……。
「それで……その子を助けるために、探偵さんのお力を貸していただきたいんです。
「……なるほど」
なるほど、とは言ったが全然納得はしていなかった。
今頃ニュースにでも取り上げられてそうな珍事件だ。
奇妙さだけが駆け抜けていた。
だが確かにそれならば、''言葉から救う''という言い回しも似合っている。
「つまり私に、その''かみのへそ''の意味を調べてご友人に教えてほしい、というご依頼ですか」
「はい……そういうことです」
「んー。それでしたら、むしろ私たち探偵よりも、それこそ大学内の語学関係の教授や図書館などの施設に聞いた方が賢明かと思われます」
事実そうだ。探偵のやることなんて、実際推理じゃない。
迷い猫の捜索か浮気調査くらいが関の山で、殺人事件やらの事件関係はお呼びでないのだ。
「はい……私もそう思い、大学や図書館などに問い合わせをしてみたんですが、やっぱり意味なんてなくて、見つからなかったんです……」
「なるほど……。でしたら私に出来ることも、そうないと思いますが……」
「いえ、''かみのへそ''の本当の意味を探してほしいということではないんです」
本当の意味ではない?
それは、つまり。
「つまり、嘘の意味をでっち上げてほしい、いうことですか?」
「はい……」
「……どうして、そういうご依頼を……?」
訝しそうに俺は問う。
「'かみのへそ''なんて言葉に、意味がないんだと分かった時に思ったんです。もう嘘でもいいから、意味をでっち上げるしかないって。けれど、私が言っても説得力がない。きっとあの子は納得なんてしないだろうって」
一瞬顔を伏せた後すぐに顔をあげて、こちらをまたその凛とした瞳で見つけてきた。
顔を上げたと同時に、だから、という声で言葉を繋げて「テレビや新聞でも有名なここの探偵さんに、嘘を吐いてもらえるのなら、きっと説得力も増すだろう、と……思ったんです」
少し眉をひそめ、まるで泣きそうな顔でこちらを、それでもまっすぐ見つめてくる。
なるほど、きっと申し訳ないと感じているのだろう。
仕事の依頼とはいえ、こちらに嘘を吐かせるわけなのだ。
気持ちのいい手段でもないし、社会的にはこちらの損失にもなりうる。
本当に真面目な子なんだな、と改めて思った。
「……なるほど」
「お願いします……!嘘を吐いてもらうなんて……そんな不躾で失礼な依頼ですが、もう頼れるのは探偵さんしかいないんです……!テレビで見たその手腕も見込んで、お願いしたいんです……!銀行強盗を抑えた話術というのを!」
「あー……いえ……あれはまぐれみたいなものですよ」
ちょっど一年くらい前だったか。
仕事の関係で銀行に寄ったその日、そこに三人組の銀行強盗が現れたのだ。
日本も末だな、なんて思いながら強盗たちに引っ掻き回されていたら、金を渡す役としてその場で一番近かった俺が選ばれた。
その流れから、強盗たちと会話する機会が生まれてしまって、なにだかんだと話していたら機動隊の突入の時間を稼いでいたらしく、強盗たちを抑えたカリスマ話術の探偵としてニュース入りしたのだった。
「お願いします……!私の友達、本当にいい子なんです……!報酬もちゃんと用意しました!ですので、どうか……!」
「報酬、ですか」
「はい。少ないかもしれませんが……十万円、ここに用意しています」
女性は隣に置いていた鞄を漁って、そこから封筒を出してきた。
受け取って中身を数えてみる。
「確かに、きっちり十万円ありますね」
「お願いします……!」
深々と頭を下げてきた。
俺が依頼を受けるか受けないか。
その答えを聞くまでは、顔をあげないという気迫を感じた。
十万円か。大学生でこの金額、集めるのに苦労しただろう。
十万円。
正直今日の金すら貧困としている今日この頃だ。
後の時間も、他に客が来る保証もない。
……んー。
まぁ、今日の飯代くらいにはなるか。
「分かりました。その依頼、お受けしましょう」
「……っ!本当ですか?!」
「はい。ですが、''かみのへそ''の意味をお伝えする際には、それは諸説あるという前提で、なおかつお伝えするのが本当の意味かは分からないという形で、ご友人にはお伝えすることになりますが、よろしいですか?」
嘘は嘘でも、本当に嘘のまま吐いてしまっては、完全にこちらが悪者になってしまう。保険はかけておくことにする。
「はい……!それで構いません。ありがとうございます」
女性は、また深々と頭を下げた。
なんとも偏屈な依頼を請け負ったものである。自分でもそうは思うが、けれどこの依頼、受けなければいけない気がしていた。
それは、なぜかというと────。
…………あ、そういえば。
「それで順序が遅れたのですが、依頼者様のお名前と件(くだん)のご友人のお名前をお伺いしてもよろしいですか?」
「あっ、すいません。忘れていました」
依頼を受けてもらえると分かって、緊張の糸が切れたのだろう。
天然っぽい雰囲気が現れていた。
なんとなく、この状態の彼女が、いつもの素なんだろうなと感じさせる。絶妙なおっちょこちょい感がある。
「友達の名前は『なばり』で、私の名前は『すずな』です。よろしく、お願いします」
そう、からっとした声が鳴り響いた。
「う、うわぁ……」
そんなももの声が後ろから聞こえてきた。
小さい声だからよかったが、下手したら前を歩くすずなさんに聞こえているところだ。
と言っても、そう声をあげるのも仕方がないことであった。
もう俺たちは、なばりというその女性のアパートに着いていた。
形は豆腐を横に置いたような長方形で、色は灰色の二階建て。
彼女たちが通う大学から三十分はかかる場所にあり、住宅街の奥の奥に建てられているせいか、周囲にはあまり人の気配がない。
アパート内に他の住人は住んでいないらしく、明かりはなばりさんが住むという二階の真ん中の部屋にしか点いていなかった。
日差しがあまり当たらない立地のせいか、妙に暗い印象があったが、それを上回る異様な雰囲気があった。
と言っても、何か特別なものがあるといったわけではない。
その逆で、むしろなにもなくて、そのなにもないという雰囲気が妙に異様だったのだ。
アパートは荒廃はしておらず、隣接している自転車置き場や小さな駐車場も清潔だ。
けれど、人が生活している気配が全く感じられない。
まるで廃墟にでも来てしまったかのような気持ちにさせられる。
生き物が、特に人が呼吸をするのには、全く似合わないような場所だと、直感で感じさせられるアパートだった。
「では、先になばりへ話をつけて来ますので、ここで少し待っていてもらえますか?」
すずなさんのその言葉に「はい。分かりました」と返事をし、扉の前で待つことにした。
閉められた扉からは、女性二人の声が聞こえた。
すずなさんがなばりさんに、俺のことを説明しているのだろうが、なんと言ってるのかは扉越しには分からない。
部屋の扉は黒く、横にある曇りガラスからは部屋の様子は見てとれなかった。
「そういや、荷物はちゃんと持ってきた?」
俺はそう言い、隣にいるももに確認を取る。
荷物というのは、資料室から持ち出してきた『それらしい情報元』のことだ。
いくら『本当の意味かどうかは分からない』という言い訳の上で嘘を吐くとはいえ、何も証拠を持たずに口だけで上手くいくとは正直思っていない。
嘘を本当に思わせれるような、それこそ『嘘の調査資料』として、事務所の資料室から色々引っ張ってきていたのだ。
「おう。ばっちし。言われたやつ持ってきたよ」
けろっとした声でそう返された。
右手に鞄を引っ提げている。
ちゃんと持ってきているようだ。
実際資料室には、探偵としての必要な書類や物品から、今までの客から貰ったお礼の品など、種類に富んだ物で目白押しだった。
それなりに本当っぽいものが多く、それらを用いれば楽に事は終わりそうだと考えていた。
すると耳打ちするように、そんなことより、というももの声が聞こえて
「こんな依頼受けてよかったん?」
という言葉が続いてきた。
「依頼とは言え、嘘を吐くなんて裁判食らったら私たち負けるだろうしさ。というか、もうこれ私らの仕事じゃなくない?病院に連れていけなかったとか言ってたけど、だからって探偵に頼むことじゃ確実に無いしさ」
それは正直その通りだ。
いつもの俺だったら、こんな依頼はきっと受けていない。
「あー、それは」と、ももに理由を説明しようと口を開いた瞬間、玄関の扉が開いた。
「すいません。お待たせしました。どうぞお入りください」
すずなさんがそう応対してくる。
依頼の方が優先だと思い、また後で、という意味を込めて、ももにアイコンタクトを交わす。
伝わったのか伝わってないのか微妙な表情をももがした。
なんだその顔。
まぁとりあえずは置いておこう。
「お邪魔します」と言って、俺とももはその部屋に足を踏み入れた。
「すずなが言った通りだ……。テレビで見たことがあります、銀行強盗を捕まえた優秀な探偵って」
無造作に髪を伸ばした貞子みたいな女性が、部屋の奥にうずくまっていた。おそらく、この女性がなばりさんなのだろう。
部屋には、雪崩のように大量の本や紙束が溢れている。
吊られた照明はオレンジ色の淡い光を発し、部屋を照らしていた。
「いえ、そんな、優秀だなんて恐縮です。この度はすずなさんからのご依頼を受けまして、なばりさんのお悩みになってらっしゃる''かみのへそ''をお調べしていたんです。その調査で知ることの出来た意味についてお伝えに上がりました」
「……っ!すずなが言ってたのは本当だったんですね……!'かみのへそ''の意味を知ってるんですね!?どんな意味なんですか!教えてください!!!」
予想はしていたが、凄まじい勢いで迫ってきた。
もうほぼ足にしがみついている。
「えぇ、もちろんです。ただ前提としてお伝えする意味については諸説あるものとして、本当かどうか分からないということをご理解の上でお願いします。では、実際集めてきた調査資料も交えてお話ししますね。ももー」
「はーい」
ももを呼び、鞄から嘘の調査資料を出させようとする。
「どこにそんなのあったんですか」「一体どんな意味なんですか」と一斉勢いを止めることなく、尚もなばりさんが迫ってくるのを適当な相づちで交わしている最中、引っ提げていた鞄を下ろし、中を漁っていたももの手がピタリと止まるのを視界の端で捉えた。
その動きから、完全に何かをしでかしたのであろうことを察した。
……………すごく嫌な予感がする……。
鞄から大きな本を取りだして、俺に渡してくる。
本……?本?そんなもの俺は用意してたか?と訝しく思いながら手に取った本を見てみる。
「……あ」
その側面には『白秋全集 歌集6』と書いてあった。
ももの方を振り返るが、ももはあらぬ方向を見て顔を合わせないようにしていた。
というより、俺が振り返るのと同時に顔を逸らしたに違いない。
床に置いてある鞄の中身を、探るように目を凝らして見てみたら、ぬいぐるみらしき物体の足や楽器らしきものが入っているのが見てとれた。
間違いない、こいつ。
処分予定の物品と間違えて持ってきやがった……。
おそらくだが鞄の中にあるのは今朝方、資料室を整理しているときに処分用のかごに入れておいた物品たちだろう。
確か、全部でなんだったか。
『白秋全集』と『黒い手帳』と『ぬいぐるみ』と『太鼓』……だった気がする。
「どうしたんですか……?早く見せてください!何を持ってるんですか?」
変わらぬ勢いで、なばりさんがそう言ってくる。
まずい……。
資料を間違えていたと言って一度退却するか?
いや、なばりさんのこの興奮だ。それでは収まらないだろう。
間違えれば癇癪を起こす可能性すらある。
そう頭の中がパニックになるが、すぐに切り替えて冷静さを保とうとした。
いや、落ち着け。
今回の仕事は嘘をつくことが目的じゃない。なばりさんを落ち着かせることが目的だ。なんなら嘘なんて結局はどれだけ考えたところで、どれも同じだ。上手い嘘も下手な嘘もありゃしない。特に存在しない言葉の嘘を吐くんだから尚更だ。
よし、ならもうこの手札だけで乗りきってやる。少々アドリブが多くなるが、なんとかしよう。
そう腹をくくって、俺は話し始めることにした。
「あ、はい。これは『白秋全集』ですね」
「白秋全集……北原白秋のことですか。それが''かみのへそ''と関係してるんですか?」
「はい。そうなんです」
自信のある声でそう言っておいた。
いや、まぁ関係なんて全然してないけど。
なんにしても、とりあえず事前に用意しておいた嘘を述べることにした。
「''かみのへそ''は、実際の文字に置き直すと『上(かみ)の綣(へそ)』のことだと思われます」
「上の綣……ですか……?」
「はい。意味としては『目上のものへ傅(かしず)く』や『神様からのもてなし』ということになりますね。綣(へそ)には、『まといつく』や『手厚い』という意味がありまして、それらが転じて『傅く』や『もてなし』という意味になったんだと思います」
「なるほど……。ですが、それが北原白秋とどう関係があるんですか?」
うん、そこなんだよなと俺も思う。
さてどうやって関連付けようか。
北原白秋なんて特に知らないんだよな。
いやそう言えば、なばりさんは元々''かみのへそ''の意味を求めて膨大な調べものをしていたはずだ。
とすれば、それっぽい一言が言えれば、なばりさんがその膨大な調べものから得た知識の中で勝手につじつまを合わせてくれるかもしれない。そこに賭けてみよう。
「実は……北原白秋が、その言葉が使われていた地域の出身ではないかと言われているんです」
あくまで言われているという話ですが、と予防線を張っておく。
予防線どころか刺付きフェンスだ。
「な、なるほど……!綣と言えば、そういう地名が滋賀県にあるのを知ってます!もしかしてそれが関係してるんですか?!」
へぇー、そんな地域あるんだ。
全然知らなかった。
「そう言えば、滋賀県の綣には、吉井勇の歌碑があるというのを見たことがあります!吉井勇は北原白秋と『パンの会』を共にしたって話なので、もしやすると、白秋繋がりで綣って言葉が流れて、滋賀県で地域名として定着したのかも?!なるほど……白秋繋がりというのも頷けます」
上手いこと良い方向に転がり込んでくれた。正直めちゃめちゃ助かる。
もうその理解の仕方はオウンゴールにも近いと思うが。
だがこのまま北原白秋の話をしていくのはまずい。
じゃあその北原白秋全集を読ませてください!なんて言われるかもしれない。それでは堪ったものではない。早急に次にいくとしよう。
ももに次の資料を出すように言う。
他の資料はちゃんと持ってきたか期待したが、出てきた黒い手帳に淡い期待も打ち砕かれる。
ちゃんと持ってくるの間違えてんな……。
というか、その渡してきたときの「へー、上手いこと嘘つくじゃん」みたいな顔はなんだ。
事務所戻ったら覚えとけよ。
「次はこちらの手帳ですね」
「これは……?かなり古い手帳ですね……。真ん中に穴が空いていますし、中身にはなんと書いてあるのか分からない文字が羅列されてますが……?」
元々、持ち主が刑事の手帳だ。
犯人振ったナイフから守ってくれたとも言ったし、だからか大きな穴が開いていた。こんなにボロボロだったのか、この手帳。
あんまりよく確認していなかった。
開くと、すごい走り書きで文字が書いてある。正直俺にも読めない。
「この手帳はインタビュー記録を書き記したものですね。''かみのへそ''が使われていたとされる地域へ実際に赴いて、そこの地域住民の方たちへ聞き取り調査をした記録を記した手帳なんですよ」
「な、なるほど!そこでは、どんな言葉が使われていたんですか?手帳に記載されている文字は……少し形が独特で、私読めなくて……すいません……。なんて書いてらっしゃるんですか?」
俺の字が下手みたいに思われたようで少し癪だ。
隣のももが、少し笑っているような気配を感じ取った。
「上の方から、私、地域の方、私の順で会話形式でインタビューを行って、それを書き記してる文章になります。かなり長いので調査結果を要約しますと、''かみのへそ''はその地域では大昔に使われていて、今ではほとんど廃れた表現になっているという結果でした」
「なるほど!ここ、晩御飯って書いてるように見えるんですが?」
「あー、はい。言葉の聞き取り調査なので、実際の生活用語の際にも''かみのへそ''が使われていないかを調べるために、晩御飯のお話などもさせて頂いたんですよ」
「なるほど!…………えっと、ここ、明らかに、何年か前に結構な事件を起こした犯罪者の名前が書いてあると思うんですが……?」
元が刑事の手帳だからだろう。
よく見れば、人の名前らしき文字がかなり見受けられた。
「えー、はい。それも人を表す際に''かみのへそ''という言葉を使うかを調べるために、その人名を使わせて頂いたんです。その方、有名でしたからね」
「な、なるほど……?ゆ、有名……ですか……ま、まぁたしかに」
このまま手帳の中身を質問され続けたら、いずれ墓穴を掘るだろう。
次にいくことにした。
あと鞄に残ってるのはおそらく『ぬいぐるみ』と『太鼓』である。
どちらも他二つに比べたら、とてつもなく扱いづらい。
とするなら、もうここは勢いだ。流れで納得させる他ない。
ももに二つ同時に渡すように言い、『ぬいぐるみ』と『太鼓』を受け取った。
「次はこちらの二つです」
「これは……ぬいぐるみと太鼓ですか?これは一体なんの……?」
「まずこちらのぬいぐるみですが、こちらはその地域で祀られていた神を模した人形だと言われています。''かみのへそ''には先ほど『神様からのもてなし』という意味があると言いましたが、そのもてなしてくれる神がこれであったということらしいですね」
「そんなものがあったんですね……!なんというか見た目は少し不気味ですね……猫にも似てますし、なんだろう、どこかで見た気もします!興味深いですね……これは……」
どこで見たことあるんだ、このぬいぐるみ。多分市販にもこんなぬいぐるみ売ってないぞ。お礼の品として貰っといてあれだが、完全に呪いの人形とかと同じ分類だ、このぬいぐるみ。
そんなことを思っていたら「そして、そちらの太鼓は一体なんの資料なんですか?」と件(くだん)の太鼓へと目線を移しながら、なばりさんがそう聞いてきた。
「これはですね」と前置きのように言いながら考える。
隣のももを見やると、どう乗り切るのかを期待してるような目で見てきていた。……よし、ならば。
「実は''かみのへそ''は歌にもなっていたんです。その歌の曲を流すために用意した太鼓ですね。実際に私が叩いて、助手のももに歌わせますので、それをお聞きください」
隣から、はぁ?!と言いたげな雰囲気を感じる。
「なるほど!!是非聴かせてください!」
では、と俺は言い太鼓を構えて、ももの方を見る。
ものすごい抗議の視線を向けてくるが、すぐに覚悟を決めたようで、一度目を閉じ深呼吸をしてから、歌い始めた。
「かーみのーへそー、かーみのーへそー、おーまえのひーざにゃー、どーこへーゆくー。かーみのーへそー、かーみのーへそー、わーだちのさーきにー、こーろげーゆくー」
……音が合ってるのか合ってないのかもうわからない。
なんとなく曲と歌声のリズムは合っていたのだけは奇跡だ。
心なしか、後ろで見ているすずなさんも「えぇ……」というような顔を浮かべている気がする。
気のせいということにしておこう。
「……なるほど。民謡のような歌ですね。どこかで聞いたことのあるメロディです。民謡にもなっていたということは、''かみのへそ''は何かの祭り事や儀式にも使われていたのかもしれないですね……んー。ちなみに歌の意味はなんなんですか?」
特に不審がられてはいないようだ。この歌で信じるなら、もうなんでもいいんじゃないか?とさえ思わせた。「意味については不明瞭な点があって詳しくは分かりませんが、おおよそは神様からの何か贈り物を喜ぶ歌かと思われます」とはぐらかしておく。
「以上が私たちが調べて知ることのできた''かみのへそ''の情報ですね。大まかに伝えましたが、いかんせん文献もなく、''かみのへそ''が使われていた地域でも存在を知ってる者も極わずかだったので、正直正確な情報かは疑問が残るものばかりなことは何卒ご承知の上でお願いします」
「なるほど……もうほとんど廃れた言葉なんですね。それじゃあ、どれだけ調べても分からなくて当たり前ですね、それは……」
なんとか乗りきったと安堵した最中「ちなみに、その地域ってどこなんですか?」となばりさんが聞いてきた。
「あー……それは」
あ、まずい、そう言えばそこはまだ言ってなかったな……。
さてどこにするか、いっそ場所すらも曖昧なことにしておくか?いやしかし、それだと今までのすべてが意味を成さなくなる……。
そんな風に逡巡(しゅんじゅん)していると
「福岡県の柳川市ですよ」
とももが口を開いた。
「北原白秋に関係があると始めに申し上げた通りです。白秋の生まれの柳川市に赴いてこれらの資料は作成しました。柳川市はご存じですか?」
「はい。少しですが知ってます。しかしなるほど……確かに白秋は柳川で育ったと言いますし、それならば納得です」
え、なんでそんなん知ってんの?と言いそうになったが、ぐっと堪えて口にはしないことにする。
なんにしても、これでなんとか嘘の結びまで持ち込めた。
「では、こちらの資料はお渡ししますね。ご自由にお使いください」と言って『嘘の調査資料』たちを渡す。ついでに処分もできて一石二鳥だ。
まるで新しいおもちゃを買い与えられた子供みたいに、渡された物品に食らいつくようにしてなばりさんが手に取った。
一応の仕事はこれで完了はした。
「じゃあ、探偵さんたちには帰ってもらっておくから、玄関まで私送ってくるね」とすずなさんがなばりさんにそう言う。
「あ、うん、わかった」「お調べしていただいて本当にありがとうございました」となばりさんが立ち上がってこちらに頭を下げてくる。会ったときよりは、まだ理性味を感じさせた。どうやら、落ち着けることには成功したようだ。
「すいません、ありがとうございました!本当にすごかったです。なばりがああなってから、人の話をきちんと聞いてるのは本当に久しぶりで……なばり、実は探偵さんのファンだったんです。本当に無理なお願いでしたが聞いてくださりありがとうございます。頼んで正解でした。本当に助かりました……!ありがとうございます」
アパートの前で、すずなさんが深々と頭を下げてくる。
後は病院にも連れていって徐々にでも立ち直らせていこうと思います、とすずなさんが言う。
「いえ、こちらも少し粗雑な説得になってしまったかもしれません」
申し訳ない、と謝る。調査資料を間違えたことは言わないでおこう。言っても言わなくてもきっとなにも変わらない。
「それでは何かありましたらまたご一報ください。対応させていただきます」と言ってその場をあとにした。
「はー、マジで危なかったわ」
帰りの車中でそう呟いた。
なにが危なかったのか、調査資料を間違えたのが悪かったのか、それとも調べた地域の名前が思い付かなかったのが危なかったのか。なんなら1から10まですべて危なかったような気がする。
「いやほんとにそれ。でもいけるもんだね。やっぱ探偵より詐欺師のが向いてるんやない?」
「……なにか謝ることは?」
「……」
「おい」
「でもあれやん?最後の質問に答えられたの私のおかげやしさ。そこはナイスフォローやったやろ?」
「まぁあれは確かに……。ていうかなんで知ってたん?」
「あー、資料室整理してるときに、少しだけ開いてみたんよ。『白秋全集』。その時の知識」
いやー豆知識持っておくもんだわー、と悪びれのない声色でそう発して伸びをするもも。
うん。後でとっちめよう。
窓の外を見た。
大雨は収まり、少し晴れ間が見えていた。
あれから二週間、これまた最近の流れ通り、客があまり来ず、暇な午後を過ごしていた。
ももと下らない駄弁りを続けながら、煙草を咥えて座りこんでいたところ。
「あの、すいません」と戸を叩く音がした。
見るとすずなさんとなばりさんがそこには立っていた。助手のももが扉を開いて応対する。
あの依頼から二週間が経っている。吐いた嘘が嘘だけに不安しかない。本当ではないことがバレてしまってそれで直談判、だとかそういう流れで来たのだろうか?
だがそれにしては、嫌に二人とも機嫌が良さそうだった。
「今日はお礼を言いたくて」となばりさんが口を開いた。
とても理性的な声を感じ取らせる。無造作に伸びていた髪もさっぱり切ったようで、清潔そのものの見た目をしている。
なるほど、とりあえず憑き物は取れたらしい。
「今回はすずなさんが嘘を吐いてほしいと探偵さんにお願いしてたみたいで……そんなお願いを友人にさせるほど錯乱してたみたいで私……。探偵さんも本当にありがとうございました!本当に助けられました」
完全に回復しているようだった。まるで完治した患者からお礼を言われているような気分になる。医者ってこんな感じなのだろうか、と少し想像させた。
「いえ、こちらも正直本当に粗雑な仕事っぷりをしてしまったなと思っていまして。その節は本当に申し訳ないです」
どうやら訴えるということではないらしい、ほっと胸を撫で下ろすが「あ、その嘘についてなんですが」と、なばりさんが切り出して「嘘って言わなくてよかったんですよ?本当なら本当っていってくださったらよかったのに」と微笑みながらそう続けた。
ん?一体何のことを言ってるんだろうか?
「柳川市に''かみのへそ''があるって話。あれ本当だったんですね。実際に赴いたら、柳川市にありました!''かみのへそ''」
実際に合った?一体何のことなのだ?
「''かみのへそ''の意味を教えて頂いてから、だんだんと冷静に周りを見れるようになっていって。あれから一週間ですか、その時にすずなに教えてもらったんです。探偵さんの言っていたのは私を落ち着かせるためについてもらった嘘だって
「自分の友人にそんなことをさせてしまったんだなと申し訳なくなっちゃって……。それで息抜きがてらに、柳川市に旅行気分で二人で行ってみたんです。
「そしたら、本当でした!」
本当?本当とはなんのことだ?
「探偵さんの言っていた通りに、''かみのへそ''はあの地域で使われていました!
「探偵さんがインタビューしたっていってた地域住民らしき人たちもいましたよ。探偵さんたちのことを聞いたら覚えていたみたいで懐かしいって口にしてました。あのぬいぐるみや太鼓だってありましたよ!歌もあの時歌っていただいたもの、そのままでした!
「北原白秋は本当に''かみのへそ''に関わっていたようですね。調べてわかったんです。本当に探偵さんの言ってる通りでした。
「そのお礼に今日は上がったんです。本当にありがとうございました!
「けれど、本当でしたらいってくださったらよかったのに。
「これ、その時のお土産です。つまらない品かもしれませんが、よろしかったら受け取ってください!本当にありがとうございました!」
ももが二人と挨拶を交わしながら、玄関まで送っていった。
テーブルの上には、二人が置いていった''お土産''というのが残されている。
「……ねぇ、今の話さ」
「いや、口に出さん方がいい。……多分」
わかった、とももが口を閉ざす。
''お土産''と言われ渡されたのは、柳川市ご当地のお菓子と、そして一枚の写真であった。
写真は''かみのへそ''が使われていたその地域の写真らしかった。
俺やももが懐かしいと思えるようにと、写真には住民の人たちも入って撮ってもらったと言っていた。
けれど、そこにはなにも写っていたなかった。
写真に写るすずなさんとなばりさんの二人の隣には、人の形をした黒い靄だけがある。
今回の依頼、なぜか受けなければいけない気がずっとしていた。
そう、ずっとそんな予感がしていたのだ。
俺は、この写真を知っている気がする。
最近の客不足もそうだ。毎日妙にやる気も元気も削がれていく気だるげな感覚もそうだ。
そう、俺は何か。
あえて言えば、そう''かみのへそ''だ、
俺は''かみのへそ''に呼ばれている気がずっとしていたのだ。
もっと言えば、その言葉の奥に潜む何かにずっと呼ばれている気がしていた。
それがなんなのかは今も分からない。
あの二人が会ったというその住民たちも、その地域もどこかは分からない。
ただ、あの二人の目は嘘を吐いてる目ではなかった。
きっと本当に''かみのへそ''はそこにあって、本当に''かみのへそ''はそこで使われていたのだろう。
事務所は閑散としている。
深々と椅子に座り、なにかを考えるように天井を見上げた。
そこには二週間前にも見つけた人の顔にも見える黒い靄のような模様が、こちらを静かに見つめているだけであった。
誰かと誰かをかけ算した物語 惚狭間(ぼけはざま) @siroryuu
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