第10話 根性無しの言いなり
勘太郎と鶴薗と森川の判断は、田辺三佐男と仲里エリカのどちらかが主導権を握って、ムハンマド・ザッカルディを動かして、シャリフ・アブドラを呼び寄せたことは間違いなさそうだという意見で一致した。
『ただし、タリバンが田辺や
仲里の依頼をそんな簡単に
引き受けるとも思えへん。
なんらかの形でムハンマド
・ザッカルディの力を借り
てるだけかもしれん。』
その夜から、鶴薗はまたムヴェアリア前のキャンピングカーで張り込みはじめた。
ただ今回は、新藤幸太郎と小栗に加えて小林も交代で付き添っている。
森川の配慮で、警視庁の職員食堂が、毎食をお弁当にして届けてくれた。
キャンピングカーなので、お湯は沸かせる。
日本人のこと、毎食に熱い味噌汁が飲めると力が湧く。
電子レンジが装備されているので、温めることもできる。
もちろん冷暖房完備で、シャワーもトイレもある。
高架下の駐車場なので、少しテレビの映りが悪いのだが、張り込み中に見ている余裕はないので問題はない。
しばらくして、小林が妙なことに気付いた。
『鶴薗さん・・・
ムハンマド・ザッカルディ
と仲里エリカがよく同行し
ているような。』
もちろん、鶴薗も気がついてはいたが、田辺と仲里の関係を考えるとわけがわからなくなっていた。
鶴薗と小林の報告に、森川警部の反応は早かった。
私服の刑事数人を尾行に差し向けてくれたのだ。
警視庁捜査1課の精鋭刑事の尾行で、さすがにムハンマド・ザッカルディと仲里も気がつかない。
『こら、二股やな。』
鈍感な勘太郎でさえ、さすがにわかってきた。
『仲里が、田辺とムハンマド
を二股にかけていると考え
て間違いなさそうやな。』
勘太郎が森川に呟いた。
『そうですね。
問題は、田辺とムハンマド
が二股のことを知っている
のかということと。
どっちが本命かということ
ですね。』
さすがに。森川にはわかっている。
『なるほど。
どうも僕は、その辺りに鈍
感ですのでねぇ。』
頭を掻きながら、勘太郎が言うと、森川も。
『私も理解はできません。』
当然である。
『しかし、仲里エリカって、
そこまで魅力的とは思えへ
んのですけどねぇ。』
森川、同感である。
『どっちにしても、とんでも
ない女ですね。』
いわゆる悪女なのかもしれない。
勘太郎と森川には、理解し難い人物のようだ。
田辺三佐男とムハンマド・ザッカルディと仲里エリカの三角関係を調査していた新藤幸太郎と小栗が、とんでもない報告を入れてきた。
『お昼過ぎに、ムハンマドと
ラブホテルに入って行った
仲里なんですけど。
夕方4時過ぎには、田辺と
同じラブホテルに入って行
きました。
なんちゅう女ですか。』
森川は、ますます理解し難いと思いはじめていた。
田辺三佐男は、まだまだ甘いガキ程度に見ていた森川だが。
ムハンマド・ザッカルディは、いくつもの商売を経営するほどの手腕を持ったおっさんである。
仲里エリカに翻弄されるような人物とは思えない。
少なくとも、ムハンマド・ザッカルディは、自分が本命で、田辺は、浮気としか考えていないように見える。
この森川の意見には、勘太郎も同感。
『いずれにせよ。
仲里エリカが、頑張っても
騙されるような人物ではな
い。
ムハンマド・ザッカルディ
はという意見は一致してま
すね。』
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