第8話 原点回帰
狙撃手が、シャリフ・アブドラと判明した時点で、瀧川さゆりと大田区ムスリムとの接点は見えなくなった。
実行犯のシャリフ・アブドラには、金以外の感情がない。
したがって、恨みもなければ、トラブルもない。
シャリフ・アブドラに依頼した者が一番の問題になってきた。
勘太郎と鶴薗は、原点回帰した。
ムゥェアリアの関係者に向かう。
ムハンマド・ザッカルディとシャリフ・アブドラの接点。
田辺三佐男の役割は、本当に銃の改造依頼だけだったのか。
瀧川さゆりの行動は。
等々、捜査を振り出しに戻ってやり直しした。
そんな中、鶴薗がとんでもないことを思い出した。
『そういえば、
さゆりの最近の趣味。
ベリーダンスだったんです
けど、何か関係ありません
かね。』
ベリーダンスは、イスラム教の踊りである。
最近は、イスラム教徒でなくてもかなりの愛好者がいる。
ベリーダンスの独特の腰の動きから、ダイエット効果が期待されている。
瀧川さゆりもそんな中の1人だったようだ。
『ダイエットせなあかんほど
太ってへんかったやろう。』
瀧川さゆりは、どちらかといえば、痩せ型で、スラッとした美人。
勘太郎には、ダイエットが必要とはとても思えない。
『だから貴方は、朴念人なん
ですよ。
綺麗なクビレが欲しかった
んでしょうきっと。』
勘太郎が、夕食の時に呟いたことに、萌が反応した。
『なるほどなぁ。』
これまでも、萌の意見に度々助けられてきた。
『でも、よう今回は、魔界に
繋がらんとできてますね。
貴方は、魔界刑事言われる
ほど、事件と怨霊をくっ付
けることで有名でした
のに。』
萌は、完全におちょくっている。
『あぁ、今回は遺体の発見回
収現場に行ってへんさかい
になぁ。
そやけど、ベリーダンスな
んて、どこでやってたんや
ろう。』
勘太郎、ベリーダンスどころか、ダンススタジオすら知らない。
萌は、もうため息をつくしかない。
自分の夫でありながら、若者文化に、疎すぎる。
逆に、人気女優の萌には、最先端の流行の情報が入ってくる。
『ベリーダンスの教室やっ
たら、ムゥェアリアが大き
いらしいよ。』
とんでもない名前が出てきた。
当然、勘太郎はひっくり返るほど驚いた。
『ムゥェアリアって、大田区
ムスリムのか。
ハラール料理店だけちゃう
んか。
ムハンマド・ザッカル
ディ。』
同じ名前である。
少なくとも、関係はありそうだ。
『なんや珍しい。
けっこう詳しいやん。
日本人のイケメンインスト
ラクターがいるって評判に
なってますよ。』
またしても、萌からとんでもない情報を手に入れた。
翌朝、勘太郎は小栗を伴って、ムゥェアリアベリーダンス教室に行った。
『ベリーダンスって、男もや
るんやなぁ。』
勘太郎、本当に流行には疎すぎる。
小栗を窓口に行かせ、勘太郎は物影から中の様子を覗いて、またしても、ひっくり返るほど驚いた。
女性20人ほどの前に立っているインストラクターは、田辺三佐男であった。
『あの野郎。
こんなところで。
瀧川さゆりと接点有ったと
はなぁ。』
勘太郎は、即刻鶴薗を呼び戻した。
その間に、新藤幸太郎と小栗にトラブルの有無等の聞き込みを命じた。
新藤幸太郎と小栗は、生徒達に聞き込みをしていた。
田辺三佐男には、知られない程度で。
勘太郎は、知られてもかまわないと思っている。
知られたところで、まだまだ捜査が進まないと、任意同行すらできない。
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