第2話  俺は好きな少女とお喋りしにきたのに俺の護衛の方が少女と多く喋ってるんじゃないかって




「真姫ちゃん、ごめん」

真姫ちゃんに触れてみたいという感情もあるが、徹が何を言っても止められない

事に情けない気持ちもある。

 「いいよ、それにね、もしモンスターが暴れたら私達も民も手がつけられないもの」

 今までにも聞いた話だが、モンスターは水守一族より強いらしい。

 「何が民だ、何百年前の話を言っていやがるんだ。お前達が俺達より上だってか。

下だよお前等は外道のクズだ。生きてる価値もありゃしねぇよ。死んじまえクズ。

もうこの国は兵隊持ってる豪族が支配してるわけじゃねぇんだぞ」

 徹が恐れを超える怒りを感じて叫ぶ。

真姫ちゃん達は島民の事を民と言う。

徹の言うように豪族貴族が地域を支配していた時代の感覚のままなんだろう。

当然、俺や真姫ちゃんが生まれた頃にはもうこの島にもテレビも冷蔵庫もあって、選挙もあって

豪族貴族が支配してた時代の生まれじゃない。当たり前だ。

真姫ちゃんの事が好きだ。でも好きになる相手が欠点がなく倫理観が完璧

な人間でなければいけないという事はないはずだ。

本音だ。真姫ちゃんは島民の事を下に見ている。

この点で徹の言う事に口だしなどできるわけがない。

おかしいのは真姫ちゃんなのだから。

でもそれもそんな教育をされているとしたら、結界の向こうではそれが

正しいのだとしたら。俺は非難できない。

真姫ちゃんのパパさんも真姫ちゃんの兄弟も似たような事を言うし

価値観や倫理観も似ている一家だ。

結界の向こうで限られた人間で暮らしていれば、時代についていけないのも

仕方がないのかとも思ってしまう。

 「わりぃ大和。また邪魔したな」

 「いいよ、真姫ちゃんは島民の事を下に見てる。それは本当の事だ」

水守一族がその気にになれば俺達島民は殺されるだろう。

その後日本本土が現代兵器を持ち出してきてそれに勝てるかは分からないが。

 俺は少し今まで言ってなかったことを言おうと思っている。 

 「真姫ちゃん、もう水守一族が島を支配してた時代とは違うんだ。島民も水守一族の事を主君だなんて思っていない」

 「そうだよね。でも私は民の事を守りたいの」

 「モンスターを抑えているのも島の皆を守りたいっていうのは立派だと思うよ。でももう今はそれが真姫ちゃんの義務でも仕事でもない」

 「私は水守一族である事を誇らしく思ってるもん。水守一族として生きたい。水守一族が島の支配者だった頃がずっと続いていればいいとも思ってたの」

 「マジで頭いかれてやがんな」

徹が結界の向こうまで聞こえるように叫ぶわけではなく普通の声量で言う。

 「真姫ちゃんが、結界の向こうで現代の感覚とは違う育ち方や生き方をしてるのは本当だからね」

 俺も結界の向こうに聞こえるように叫ぶわけではなく徹に向けて言う。

 「しかし、あんなクズでも島民を守ろうとはしているみたいだ。本当かどうかは知らねぇがな。

お前があれぐらい島民を守る気概を見せてくれてもいいんだぜ。」

徹の怒りが少し静まったようだ。徹だって真姫ちゃんと話してきたんだ。嘘だという確信はできなくても

嘘を言ってるようには思えないだろう。

というか今日俺より徹のが真姫ちゃんと喋ってないか。いや、そんな事もよくある事なんだけど。





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チートスキルが使えるから島民を守れって言われても俺は好きな女の子といちゃいちゃしていたい普通の中学生なんだよね。 だから好き勝手に生きる 甘いからあげ @pankana

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