チートスキルが使えるから島民を守れって言われても俺は好きな女の子といちゃいちゃしていたい普通の中学生なんだよね。 だから好き勝手に生きる
甘いからあげ
第1話 聴けばなんでも答えてくれる系女子真姫ちゃん
俺はチートスキルが使えるだけの普通の中学生だ。
気力を魔力に。魔力を気力に変換できるチートスキルを持っているため、天水島の中学生の総大将をやっている。
でも俺は今も好きな女の子真姫ちゃんに会いに森の中を護衛の徹と歩いてる。
「病気だぜ、大和」
徹から何百回と聴いた言葉を今日もまた聴いた。何百回も言わせてごめんな徹。
「恋の病というか、性欲が溢れでんばかりに溢れても解消はできないまま性欲に引っ張られてる中学生病かな」
「精神病か脳の病気だろうよ。恋の病だ思春期だとかそんな温いもんじゃねぇや」
「精神や脳にまで浸食してきてるのかな。目や耳はとっくにさ、真姫ちゃんの可愛さにやられちゃってるのよ」
「大和とやりたい女なんていくらでもいるぜ。今から引き返して好きなだけやってきたらどうだよ」
徹の言う通り、こんな森の中を歩いて行かなくても俺の女になりたい女の子はいる。
3歳にはすでに気力魔力変換なんてチートスキルを持ち期待されもてはやされ、小学校でも総大将現在中学で総大将をやっているんだ。
チートスキルと総大将の肩書に寄ってくる女の子や女性がいて当然だ。
「真姫ちゃんが好きなのさ」
「何千回聞いたかな」
「俺達の総大将で希望なんだぜ。びしっとしてくれや大和」
「ふにゃふにゃかな俺」
「ふにゃふにゃへらへらぱっぱらぱーの大馬鹿野郎」
「ふにゃにゃーん」
歩きながら、地下アイドルネットアイドルがやるようなにゃんにゃんポーズをしてみる。
「ぱっぱらぱーの大馬鹿野郎、こんな所歩いててモンスターが出たら逃げろよ」
モンスターは人間世界との結界の先や海の底にいるんじゃないかと伝えられている。島民ならそう思っている。
まず間違いないだろう。誰もモンスターを見てはいないが。
結界の先にはモンスターがいると信じてるけどね、俺は。だって真姫ちゃんが言うんだから。
「そりゃモンスターが出たら逃げるよ。怖いし、徹だって怖いだろ。
もしかしたら時速300kmで走って目からビームを撃って人間なんてかすっただけで死ぬかもしれないし」
本当かどうか分からないモンスターとの戦いは噂や言い伝えにあっても、俺も徹も両親も身近な人と地元の人で
モンスターと戦ったと話す人なんていない。
モンスターに襲われたらチートスキル持ちの俺だって瞬殺されるかもしれない。
殺されるとしても戦える存在なら恐怖が少なくなるのは人間なら普通の事だろうから、
モンスターと人間が戦えるなんて恐怖を紛らわす願望かもしれない。
「モンスターと出くわしたら、俺が戦うからその間に逃げろ」
「今までモンスターと会った事なんてないでしょ」
わざとらしくふざけてみても、モンスターはいる。見た事はないけど、絶対にいる。
弱いわけがない。人類を滅ぼすとされる白竜と戦うために水守一族がモンスターを従えているんだ。
白竜と戦うためだけではなく、水守一族がモンスターを従えて結界を超えないように管理していると真姫ちゃんのパパさんからも聞いてる。
島の言い伝えでも、水守一族は人間から危害を加えないなら人間に危害を加えない。モンスターが結界を超えて俺達の方に来ないように従えてるとなっている。
言い伝えでは水守一族は善で秩序だ。
俺が会いにいく大好きな真姫ちゃんも水守一族の水守真姫だ。
真姫ちゃんが言うんだから信じてる。
「ごめん、モンスターはいる」
「ああ、いないはずはいない。俺はお前の護衛だ。お前を守って死ねれば悔いなんてない」
徹はこんな男の子だ。モンスターに襲われたら本当に囮となって死んでも俺を逃がすだろう。
この島の人間は、モンスターを恐れる。この島の人間でモンスターを信じない者は、申し訳ないが
恐怖の対象をいないと思いたがっているだけだろう。
徹と歩きながら会話をして、真姫ちゃんのいる場所にやってきた。
「真姫ちゃーん。今日は何してるー」
俺は結界の先にいる真姫ちゃんに聞こえるように叫ぶ。
「大和君だ。勉強してたよ。」
望遠鏡で真姫ちゃんを見る。
背は低く、大きくくりっとした目と少し柔らかな輪郭がとても可愛い。
隣には今日も愛ちゃんが一緒にいて、一緒にパラソルの下で勉強をしていた。
結界の向こうに電気は通ってないが、勉強道具や本はある。
真姫ちゃんはこの時間いつも、この場所でパラソルの下で愛ちゃんと勉強したり遊んだりしている。
「徹君もこんにちは。今日も大和君と仲良しだね」
真姫ちゃんもこちらを見て言う。
「俺はお前等が嫌いだよ、憎いよ。殺したいし、殺して死刑になるなら喜んで殺してやるぜ
お前等皆死んでしまえ殺させろクソ野郎ども外道ども」
徹が本当に憎しみを込めて言う。恐れも声から聞き取れる。当然だ。徹はまともで優しくて責任感があって忍耐力があって
家族思いで善人だ。悪人と言われるなら俺だ。
俺には徹を非難することなんてできない。非難されるのは俺だ。
現世の人が見たこともない滅びをもたらす白竜と戦うためにモンスターを従えてるという集団だ。
モンスターが結界を超えないように従えているなんて言われても、信じられなくて怖いと思うのがまともな人間だ。
俺は真姫ちゃんを信じてるし、愛ちゃんと真姫ちゃんのパパさんや兄弟とも結界越しに話す。
パパさんや兄弟も友好的に接してくれるし、パパさんから結界の向こうで暮らさないかとも誘われている。
パパさんの白竜と戦う話も嘘だと思えない。
もし水守の一族が結界を解きモンスターを人間に襲わせたらどうなる。
簡単に島の外には出られないから、逃げ場もなく俺達なんて簡単に殺されるかもしれない。
避難用に船はあるが、港をモンスターが押さえたら、船を潰されたら逃げ場なんてない。
こんな事を言うのは何故かって、信じてるというのは長い間真姫ちゃんと話して来たからだ。
真姫ちゃんが嘘をついてるなんて思いたくないし、信じたくない。
本当は怖い。真姫ちゃんを好きなのは、水守一族に取り入ろうとしているんじゃないかという自分への疑いがある。
自分だけでも結界の向こうで水守一族と一緒に生き延びようとしているのではないか。
当然そんな事否定したい気持ちと、否定したいのは本当にそんな気持ちがあるからだろうと思ってしまう。
「私達は、人を傷つけたりしないよ」
真姫ちゃんの声だけでも悲しそうな感情が伝わる。
「信じられないな。だったらまずモンスター全部殺してみろよ」
「モンスターは人間を襲わないし、モンスターを殺しちゃったらモンスターも怒るし、抑えられなくなるかもしれないの」
こんなやり取りは始めてではない。どうも真姫ちゃん達はモンスターを完全に力や契約で支配できてるわけではないらしい。
水守一族がモンスターを殺せば水守一族とモンスターの関係は崩れるようだ。
結界の前まで来て真姫ちゃん達と話す事は誰でもできるので、こんなやり取りをする者は別に珍しくない。
今まで真姫ちゃん達は何を言われても結界を超えて来る事はなかった。
「怖いんだよ。そんな抑えられないもん飼っておいて、もう十分島民の敵じゃねぇか。責任感じて死ねよクズ」
「私達が死んじゃったら、モンスターを従えさせられないの。結界だって私達じゃないと張れないし、私達が死んだらだめなの」
俺のチートスキルで魔力を倍にしても、広範囲に永続的にモンスターが超えられない結界を張るなんてできやしない。
普通の人間が魔法で作れるような結界ではない。
真姫ちゃん達に聞けばなんでも答えてくれるが、結界の事も魔法とはまったく別のなんだかそういう物だという事しか分からない。
徹は何度もやってきたやり取りがいつもと同じ結果にしかならない苛立ちと水守一族とモンスターへの恐怖で錯乱している。
「ああ、馬鹿大将。お前より彼女と話しちゃって悪かったな。さ、どうぞ」
徹が恐怖から逃げたくて、会話を俺に交代するように言う。
「彼女だなんて、やっぱり俺達彼氏彼女に見えちゃう」
「ああ、そうしか見えないぜ。人間辞めて結界の向こうで暮らすなら、俺も人間辞めて向こうで暮らしてやる」
「結婚式でスピーチやってよ」
「任せやがれ。寝ぼけて真姫ちゃんはなんでこんなにふにふになの~とか言ってた事も言ってやる」
「俺そんな事言ってたの」
真姫ちゃんはきっと世界一触り心地のよいふにふに加減なんだろうけど、真姫ちゃんに触れた事は一度もない。
触れてみたいな。
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