19  青森行き


一家で北国に引っ越す

鹿児島から、蒸気機関車にて

二晩寝て座席から転げ落ちた


到着、霜月、小雪


窓から永遠に降る雪を

あきず眺めた


二階まで積雪

道から雪の階段を下りて

やっとポストにたどりつく


馬車が走り

乗っているのは

カイマキを頭から被った土地のおばさん


小川のそばに水道が一本

近所の人が来て洗濯をする

絞るやカチンと凍る


言葉が通じない

ラジオもろくにないので

標準語を知らない子ども達


オトートはしょっちゅう溝に落ちた

一面の雪なので


 *****


一面のたんぽぽだった

春になるや


家の先は八甲田山まで原野である

緑の土手にきらきら小川が歌う

りんごを山ほど食べた

鹿児島ではちびちび前歯で齧って食べていた


美しい顔立ちの遊び友達

片親だったが

どんな人生が待っていたのだろう


そういえば

鹿児島にも片親の愛くるしい遊び仲間がいた

父親の居ない子が多かった


父親がやっと定職を得たのだった

クリスマスにピンクの小さなタンスを

買ってもらった、人形の服のための


弘前で見た桜

こんなものがあるのかと見上げた桜


次の冬が来る前に

突然また父親が転勤となる


日本海沿いに

蒸気機関車で南下した

どこまでも寒々しい海

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