18 はじかれたけれども
1
Lの充たされた世界の中に
「赤ちゃん」というものが登場した
期待するように長くトレーニングされていた
?印のものを待つ日々
ぷるぷるの柔らかな
泣いたり笑ったりするオトート
その子が動くたびに喋るたびに
Lは失望の憂き目をみた
誰ももうLを見ていなかった
みんなが、特に父親がLへの笑みを忘れて
オトートに夢中になった
Lを中心とした輪は消えた
別の輪に入れず、はずれ、Lは立ち尽くした
弟が憎かったり嫌いだったりするのではない
ただ意識していなかった、自分の感情を
はじかれたことの実感は
後年夢の中で現れた
Lは夢の中で傷ついた自分を知った
2
弟が人並みに
あるいは人並み以上に人生の中で
苦しんだに違いないことを
Lは自らの痛みのように感じる
同じ血、同じ肉の悲しみを
ただ一人の弟がひとり生から立ち去った今
パスワードのひとつが使うたびにLを悲します
偶然、彼の会社のロゴが含まれていた
設立した時あんなに誇らしげだったね
大切なものすべてを置いていったのね かっちゃん
アルファベットの文字がいつも滲む
とぼとぼと去っていく痩せ細った姿が見える
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