18  はじかれたけれども


Lの充たされた世界の中に

「赤ちゃん」というものが登場した

期待するように長くトレーニングされていた

?印のものを待つ日々


ぷるぷるの柔らかな

泣いたり笑ったりするオトート

その子が動くたびに喋るたびに

Lは失望の憂き目をみた


誰ももうLを見ていなかった

みんなが、特に父親がLへの笑みを忘れて

オトートに夢中になった

Lを中心とした輪は消えた

別の輪に入れず、はずれ、Lは立ち尽くした


弟が憎かったり嫌いだったりするのではない

ただ意識していなかった、自分の感情を

はじかれたことの実感は

後年夢の中で現れた

Lは夢の中で傷ついた自分を知った


弟が人並みに

あるいは人並み以上に人生の中で

苦しんだに違いないことを

Lは自らの痛みのように感じる

同じ血、同じ肉の悲しみを


ただ一人の弟がひとり生から立ち去った今

パスワードのひとつが使うたびにLを悲します

偶然、彼の会社のロゴが含まれていた


設立した時あんなに誇らしげだったね

大切なものすべてを置いていったのね かっちゃん

アルファベットの文字がいつも滲む

とぼとぼと去っていく痩せ細った姿が見える

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