優雨
※※※
「……夢が知ったら、どう思うかね?」
私の耳元から顔を上げた奏多は、そう言うとニッコリと微笑んだ。
「もう、一緒にいられなくなるかもね?」
その言葉に反応して、私の背中からジワりと汗が滲み出る。
「優雨だって、あの男が邪魔なんじゃない?」
「…………」
「あの男を夢から遠ざけてくれるならーー夢には、黙っててあげるよ?」
「……っ」
「あぁ……。勿論、夢には今まで通り優しくしてあげる。あの男が邪魔しないなら、ね」
「…………」
「悪い話しではないはずだよ?」
私の肩にポンッと手を置いた奏多は、再び私の耳元まで顔を寄せるとニヤリと微笑んだ。
「ーーよろしくね、優雨」
それだけ告げると、まるで何事もなかったかのような顔でその場を立ち去って行った奏多。
私はそんな奏多の背中を見つめながら、悔しさから下唇をグッと噛みしめたーー
※※※
「……いやぁ〜。こんな美人さんに呼び出しされるとは、嬉しいね~」
私の目の前にいる男は、金髪に染まった髪を風に
私は今ーー
隼人という男を連れて学校の屋上へと来ている。
昨日、奏多に言われた事を実行する為に。
「あなたに……っ、お願いがあるの。……もう、夢には近付かないで欲しい」
「……は?」
突然そう切り出した私に驚いてみせた隼人は、その眼差しを真剣なものへと変えると再び口を開いた。
「……なんで?」
「奏多が……、怒るから」
怪訝そうな顔を向ける隼人に、真っ直ぐと真剣な眼差しで見据えて答える。
「…………。そんなに奏多って奴が大事ならーー」
「っ……違う! 私は夢の為に! 夢がっ……! 奏多が怒ると、夢が怖い思いをするからっ……!」
突然声を荒げた私に一瞬驚いた顔をみせた隼人は、大きく溜息を吐くと表情を柔らげた。
「……夢ちゃんの為ね。うん、わかったよ。……けど、何かあったら俺は迷わずに助けに入るからね?」
「……ありがとう」
「うん。だからさ……、頼むから泣かないでよ」
困ったように微笑みながらそう告げた隼人の言葉で、自分が涙を流していた事にようやく気が付く。
私は頬に流れる涙をそっと拭うと、これで夢のことを守る事ができたのだと、心から安堵したのだった。
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