02
「振ったのか?」
「ああ」
仕事仲間。訊いてくる。
「あんな上玉を。もったいねえなあ」
「そういう、顔や身体で判断するようなことを、俺はしない」
大事なのは、中身。だから、相手がどんなに顔が良くても。スタイルが魅力的でも。必要だとは思わない。
「女性として獲得できるトロフィーの全てをコンプリートしたような理想の女性なのにな。ほんとに、もったいねえよ。お前みたいな朴念仁を好きになっちまうなんて」
「向こうが勝手に好きになっただけだ。俺にとってはどうでもいい」
「お前ならそう言うと思ったよ」
仕事仲間。索敵の網に、何か引っ掛かったらしい。
「なんて言って振ったんだ?」
「おい。索敵の結果を言えよ」
「なんて言って振ったんだよ。先に教えてくれよ。重要な情報だ」
「魅力を一切感じない。せめて、もうすこし俺が魅力を感じられるような何かを身につけてから来てくれ。そう言った」
これの、どこが重要な情報なのか。
「ばかだなお前。敵増やしたぞ」
「は?」
「お前が振った相手のお友だちらしき有象無象の人間が、大挙して押し寄せてくる。逃げるぞ」
仕事仲間。機材を片付け始めている。
「はあ」
なんとまあ、面倒なことか。
「お前のせいだから。自業自得だから」
「なんでだよ?」
「そういうときは、振るんじゃないの。まず一旦告白を受諾して、自分の好きなタイプになってもらえばいいのさ。それをお前は、道理が判らんから振っちまいやがって」
「あ、そうか。振る必要、なかったか」
「ほれ。機材半分持てよ。逃げるぞ」
機材を抱えて。
走った。
突き抜けるような、青空。
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