第28話 放課後、雑賀の告白

 放課後。

 東校舎二階の部室には、雑賀と更科と沢口と小林がいた。エリはまだ来ていない。

 

 沢口は昨晩作ったマカロンを三人に配った。三人は早速、開封し、三種のマカロンを堪能する。


「雑賀、ノート、エリちゃんに渡した?」

 更科は顛末を知りたがった。

 「完璧」とだけ言って、雑賀は更科の肩を叩いた。その意味が、更科にはいまいち分からなかったが、二人になにか進展があったのだろうと満足した。


「そう! エリだよ!」小林はマカロンでいっぱいの口で興奮して話す。

「真紀ちゃん?」

「エリがね、昨日、ジョイキチでデートしてたの! ウチの制服のイケメンと!」

 雑賀と更科が食いついたことを、小林は見逃さなかった。


「エリに彼氏でもできたっていうの?」

「あの雰囲気はなんか、告白っぽかった! なんかイケメンが真剣な顔で何か言ってさ。そしたらエリがまごついてて」

 真紀は両手に持ったマカロンをコツンとぶつけた。

「でも、ごはんくらいなら、異性同士でも行くんじゃないかな」

 雑賀がショコラのマカロンを口に入れた。

「てか、ジョイキチで告白とかムード無さすぎじゃね?」

 更科がマカロンを上下に分離させて、片方ずつ食べる。

 それを沢口が「なんで分けちゃうのよ」と制止する。


「えー、でもエリ、すっごくかわいかったんだよ?」

 理由になっていない理由に、更科は閉口したが、沢口は「それは重要ね」と応じた。雑賀は少しうつむいてから、静かに言った。


「いや、エリちゃんはいつでもかわいい」

 一同が雑賀を無言で見た。三つの向けられた無表情に、雑賀は一驚した。

「え、何かダメだった?」


「雑賀、この際だから、はっきりしとこーぜ」

「そうね、私、この時を待っていたわ」

「え? 嘘でしょ? 宙、エリのこと好きなの?」  

 小林が爽快なフライングをする。更科は笑いがこらえきれないという面持ちで、沢口を見る。沢口は「あらあら」と雑賀に視線を送る。


「みなさん! 雑賀くんから重大発表があります!」

 更科が仕切りなおし、小林がドラムロールの音真似をする。

「さあ、雑賀くん。白状しなさい」

 雑賀は完全に四面楚歌である。雑賀は机に両手をついて、やや前屈みになった。

「私、雑賀宙はエリちゃんのことが好きです」

 厳粛な声で、雑賀は告白した。


「お、おおお……」

 誰も雑賀の言葉に反応できないなか、更科が口を開いた。

「こうして聞くと、なんか気持ち悪いな」

「そんなことを言うな。俺の真剣を返せ」

「雑賀くん、もう一回言ってくれる? 録音し忘れたわ」

「宙が恋とか、ウケる」 

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