第14話 甘くない

もうすっかり暗くなっているのにラッシュの家には明かりはつかない。



確かラッシュは結婚していて、妻がいる。



子供は居ないハズだ。



その妻も仕事が忙しいらしく、出張や残業なんてしょっちゅうらしい。



イイ加減飽きてきた…。



腹も減ったし、帰ろうかと思っていると、ラッシュの自宅前に一台のタクシーが止まった。



慌てて持っていたカメラを構える。



探偵の必需品だ。



後部座席にはラッシュと若い女が座っている。



明らかに妻ではない。



ラッシュは降りぎわにタクシー代を女に渡し、キスをして降りた。



タクシーはそのまま若い女を乗せて走り去った。



ID「なんて分かりやすい奴だ…。」



そう小声で呟いた。



恐らく通報したのは今の若い女だ。



そして、やはりラッシュは犯人だ。



恐らくはあの若い女と共犯だな。



しかし動機がない…。



いや…恐らくイムに浮気のネタでも知られたか…。



夫の浮気に気付いた妻がイムに浮気調査を依頼したか…。



何にせよ、ネタはつかんだ。



後はもう一回ノキに潜入してもらわなければならない。



奴の容疑を固めるためにな。



タバコに火をつけ、明かりが灯ったラッシュの自宅に背を向けた。



探偵は…甘くない。

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