第3話

 雪原を駆け回って、はや数分………数分?


 うん、三分くらいでいいや。


 色々と、木の間を駆け抜けたり、邪魔な岩をぶっ壊したり、太い枝から枝へと飛び回ったり、邪魔な樹をぶった切ったり、木の幹を蹴って高速で移動したり、なんか轢いたり……………。


 順風満帆な猫科ライフを満喫してたのよ。生まれてまだ一日も経ってないけど。


 そう考えたら、俺って生後(約)三分?


 ばぶぅ。あぶぶぅ。


 ………やってて気持ち悪くなってきた。


 まあ、しゃーないよ。中身は三十代手前のおっさんだし。


 あれ?三十代手前っておっさんだっけ?



―――――――――お兄さんとお呼び!



 冗談はさておき。


 はい、なんかよく分かんない洞窟を発見しますた。少年心がびんびんに反応しております。前振りとかどうでもいいんで、凸る。


 本能の赴くままに!



『だって俺、猫科だから!』



 ぺたぺた、もふもふ。


 気分はあったかもふもふブーツを履いてる感じ。


 肉球を覆いつくすばかりに生えて伸びた毛が、良い感じに暖房効果を出してるのよ。猫で良かったぁ!


 今、気づいたけど………今の俺の恰好って人間だったら裸なんだよね。


 いやん、えっち。



 でも残念だったな!こちとら天然もふもふスーツを自前で生やしてんだよ!


 あっはぁ~んなシーンを期待したお前!ふははは!


 ヴァカメッ!画面に映ってるのは人間じゃなくて、猫科(?)の謎生物だよ!


 もふもふで可愛いシーンしかねえよ!ケモナーは喜べ!



 俺も喜んでおこう。ひゃっほーい!



『それにしても、奇麗な洞窟だな~。飛〇石でも埋まってんのかな?』



 某、バルスで目がぁぁぁぁなサングラスおじさんが求めてやまなかった、あの青くて光ってる宝石みたいな鉱石。



 ぶっちゃけ、あのでかい飛行〇の結晶さ。何回見てもエヴァに出てくるがちゃんがちゃん変形する使徒にしか見えないんだよねー。


 はっ!もしやご親戚!?


 そんな風に一人漫才をしながら奥へ奥へ、ぺたもふぺたもふ。


 ついに辿り着いたそこは……………!



 熊のおねむ~現場でした。



 さーせん、お邪魔しました。



 踵を返して帰ろうとした時――――――本能がくすぐられた。



 あれ?あのクマ……………なんか美味しそうだな?


 それに、この洞窟も何か居心地良さそうだし………頭の中がふわふわしてくる。



 ふと、俺は自分が人間じゃない事を思い出した。



 そうだ。別に我慢しなくても良いんだ。欲しいなら、力づくで手に入れればいいんだ。



 野蛮という事なかれ。所詮この世は弱肉強食。誰もが日々を生きようと必死に過酷な自然の中で頑張っている。



 じゃあ、俺もそうしようかな?どうせ、一度は死んでるみたいなもんだし。


 それに、もう縛られなくても、良いよね?



――――――――決めた。



 このクマぶっ潰して、ここを俺の寝床にする。



 心の奥底で、誰かが囁く声が聞こえた。



『一つに、上へ昇るために』



 その声が何なのかは知らん。だけど、俺の本能が告げていた。


 その声に従うのもありよりのあり、と。



 おうおうおう!そこの雪原のクマさんよぉ?


 おめえに恨みはねぇが………ちょいと顔かせやぁ!



 言葉は離せないけど、心の中でチンピラムーブしてもいいよね!

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