第1話
目が覚めた。そして、違和感しかない身体にちょっと驚いた。
まず、何か全身が暖かい。温い。ぬくぬくだ。高級の毛皮に包まれてるみたいな気持ちよさがある。
あと、猫背なのに全然苦しくない。むしろ、これこそ正常と言わんばかりに猫背が普通になってる。
うん、しかも立ち上がろうとすると背中めっちゃ痛い。ビキビキ言う。
背骨が折れるわ。これ。
四つん這いというより、なんだろうな…………二つの足で立ってるみたいな感じがする。
右腕(?)を上げる。
……………ん?
白い、灰色と黒も混じってる。いや、白っていうよりは………白銀?
雪みたいにキラキラしてる。
しかも、もふもふしてる。もこもこじゃない、もふもふ。
あれだ。テレビの動物バラエティー番組でやってた、雪国のヤマネコみたいな感じ。肉球が隠れるくらいに毛がもふもふしてる。
……………。
唐突に、やってみたい事ができた。
もし、自分が猫になったらと考えた時、一度はやりたかった事。
指に埋まってるような感じの、硬いものを押し出すイメージで、俺は右手からそれを出す。
シャキーン!
効果音あったらそんな感じの音と出そう。
透き通った水晶――――いや氷?―――に似た鉤爪状の爪が伸びた。
おおおおお!
すげえ、まじで出たよ。
……………ここまで来ると、やっぱり否応なしに突き付けられますなぁ。
どうやら私、なんかの猫科の動物に転生してしまったようです。
え?なんで猫科なのかわかるのかって?
んなもん、肉球とこのもふもふ具合を見たら分かるわ!
猫好き、にゃめんなよ。
さ、て。自分が何なのかが理解できたので、ここがどこなのか把握しますかね。
雪、吹雪いてる。絶賛、吹雪き中。
ひゅお~って冷たい風が鼻をくすぐる。でも、不思議と嫌な気分じゃない。
冷たいっていうけど、この吹雪の真っただ中にあって、俺は全然寒くないと感じている。
なんだろうな。森林浴した時のマイナスイオン?それとも、お寺で座禅を組んで全ての音が消えて自然と一体になった時みたいな?
なんかそんな感じの心地好さがある。
でも、普通の猫ってか動物って、吹雪きの中でここまで平然としてられたっけ?
俺、もしかして動物じゃない?
……………サブカルチャー全般を嗜み、娯楽を堪能してきた俺の勘が告げている。
俺は、人間でもない、ましてや動物でもない。
猫科な事は確かだが、俺はなにかスピリチュアルな何かに転生したのだと!
いや、中二病とか言うな。そうとしか説明がつかないんだよ。でなきゃ、寒い環境に適応した動物だろうと死んでるっての。
拝啓、死した家族のみんな、あと友人の方々。
改めて、言わせてもらおう。
俺、人外のもふもふに転生したよ。やったじぇ!
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