異世界に猫科の何かに転生した俺が、第二の人生を満喫する話

にゃ者丸

プロローグ

 朝起きて、顔を洗って歯を磨いて、朝飯変わりにカロリーメイトを一つ齧る。

 最近、これしか食ってない気がする。


 宝くじで一発当てて、働く事を止めて今の生活を送るようになってから、毎日が充実しているだろうと思う。


 でも、どこか満たされない。そんな思いが俺の中にあった。


 カレンダーの日にちにバツ印を入れる。家が無い時からの癖で、これやらないと一日が始まらない気がするので、いつもやってる。


 カレンダーの横に備え付けられた鏡を見る。


 髪、少し伸びたかな?それに、徹夜でゲームしたから目の下に隈ができてる。


…………別にいいか。外に出る用事もないし。マスクするし。


 新型コロナウイルスが流行って、自宅で自粛するようにって風潮が出来てから、俺は特に用事が無い時は殆ど家の中にいる。


 買い物も、今時はネットで注文できるから、なおさらだな。


 都心ではあるが、割と静かな所のマンションに住んでるので、特に不満もなく生きているが…………最後に人と会ったのって、何時だったっけ?




 ネットで注文して買ったゲーミングチェアに座り、パソコンの電源を入れる。静かな起動音と共に、パソコンが立ち上がる。


 なんで、パソコンの電源が入れる時〝立ち上げる〟なんて言うんだろう?



 通知に一通のメールが届いていた。


 開くと、俺の本名の後に『■■ ■■様へ、アンケートのご協力をお願い申し上げます』とタイトルが書かれていた。


 取り敢えず、見るだけ見るか。


 メールをクリックする。ワイヤレスのマウスもあるが、やっぱり俺は線のあるマウスの方が好き。


 適当に読んでいくと、内容は簡単なもので、普通にどこかの企業のアンケート調査の協力願いのメールだった。


 どうしよっかな。深夜アニメに録画してたやつは全部見ちゃったし。


 それに、YouTubeで登録してるチャンネルには、誰もライブをやってないようだった。


 暇だな。何もすることないな。



 暇と分かったので、アンケートに答える事にした。うん、暇だし。


 特に怪しい訳でもなし。普通にアンケート調査ってだけだろう。


 メールに添付されていたURLをクリックして、アンケートまで飛ぶ。



 アンケートの内容は、何だか自己紹介シートみたいなやつだった。


・名前

・生年月日

・職業

・好きな食べ物

・好きな動物

・好きなもの

・趣味

・特技



「名前は■■ ■■。生年月日は平成○○年×月△日、職業はフリーター、好きな食べ物はオムライス、好きな動物はネコ、好きなものはサブカルチャー全般、趣味はサブカルチャー全般の娯楽、特技は…………」


 特技、なんかあったっけ?



 あ、あれでいいや。昔からそうだったし。



「特技は〝幸運〟っと」



 そこから先のアンケート内容は一風変わった内容だった。



Q.もしも自分が転生するとしたら、何になりたいですか?



「えーっと、これは既に決まってるな。猫科の動物。人間はやだ」



Q.どんな季節が好きですか?



「冬」



Q.もし自分が何か超常的な能力に目覚めるとしたら、どんな能力が良いですか?



「水と氷とか雪とか………つか冬の支配者みたいな能力がいい」



Q.あなたは自分が人でなくなったとしても、構わない人間ですか?



「はい」



Q.あなたは突如、自分が異世界に行ったとしても、元の世界に帰りたいと思いますか?



「いいえ。状況に依るっちゃ依るけど、こんな世界にいたいとは思えんね、たとえ平和だろうとさ」



Q.あなたはこの世界に未練はありますか?



「未練……………」


 どうなんだろ?家族はみんな死んでるし、今の生活は充実してて楽しいしな~。

 あ、でも、あれだな。なんかつまんないというか……………上手く言えないけど、もう十分だから、かな?


 子供の頃はとにかく生きる為に必死だったけど、なんやかんや上手くいってたし。

 それに、学校もちゃんと高校も卒業して、友達とも好き勝手に遊んだし。

 その友達とは、もう何年も会ってないけど。


 人生に未練――――――なし。



「未練はない」



 最後の一文、『ここまでアンケートにご協力ありがとうございました。最後に下の送信をタップ、もしくはクリックしてください。それでアンケートは終了になります』を読んで、〝送信〟にカーソルを動かしてクリックする。




 その瞬間、俺の意識はぶつりと途切れた。



 最後に見た光景、それはパソコンの画面。



 薄っすらとだが、真っ白い画面に、何かの一文があった気がするが、急速に落ちていく意識に抗えず、俺の意識は暗闇へと沈んでいった…………。














『あなたの望む世界へと、あなたを提供します』








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