第22話 変態のフレンドは変態 後半

「すみません、少々お聞きしたいことがあるのですが、今お時間よろしいでしょうか?」


「はい、なんでしょうか?」


「ギルド職員ってどうやったらなれるんですか?」


「へぁ!?」


 とりあえずギルドに行ってみたが、女性職員の反応がおもしろかった。そして奥から支部長が出てきた。


 にしてもタイミングが良すぎだろう。ホール内がざわついてるから気になるのは仕方ないけど。


「三人とも、奥にどうじゃ?」


 支部長は笑顔で奥の部屋を指さし、ギルド職員に耳打ちしている。


「わかりました。では失礼します」


 大飯さんは立ち上がり、キビキビと歩きだして奥に行ってしまったので、仕方なく俺達もついて行く事にした。



「で、職員になりたいと言うことじゃが……。どういう趣じゃ?」


「安定した収入と――」


 大飯さんは色々な質問にハキハキと答えている。面接か何かだと思っているんだろうか?


「ふむ、書き物系を所望と……。できれば魔物退治の方に行って欲しかったんじゃが……。どうにかならんかのう?」


「ギルド職員としての業務なら、問題ありません」


「……少しまっててくれんか?」


「はい」


 そう言って支部長は席を立ち、部屋から出ていった。そして副支部長と一緒に入ってきた。



「少し相談したがギルドで雇用し、臨時で人が欲しいパーティーに入って欲しいのが現状じゃ。ただそうすると給金の方がどうしても低くなる。なので毎日通い、条件の合った場所へ入って頭割りした方が正直儲けが多い。だから職員としては雇用しない方が良いと結論になった。ただ。ギルドで討伐メンバーを募集してる時もあるので、そういう時はそっちに入ってくれると嬉しいのじゃが」


「わかりました。そうさせていただきます」


 なんか話しが纏まりそうだ。けどそれで本当にいいの?


「問題はお前の性格や協調性だ。面倒事が多い場合は、悪評が広まって誰も声をかけなくなるぞ?」


「問題ありません。相手に合わせる事は得意です」


「嘘だな……」「嘘だね……」


 俺とヘイの言葉がかぶった。戦闘中に敵陣に突っ込んで散々好き勝手やってるイメージしかねぇもん。


「アレは遊びだから。仕事なら真面目にやりますよ?」


 嘘くせぇ……。けどオンオフを切り替えつつ、プレイスタイルが特殊なだけなのかもしれない。


「まぁいい。一日だけ俺がお前を指名し、豚のいた森での狩りに誘う。そこで判断する」


「心配だから同行します」


「あ、俺も行くわ……」


 ヘイも心配らしい。ってかこっちに来て間もないなら、色々と不安だろうしな。


「なら俺は三人の後ろを付いて行く。明日ギルドが開く時間に、正門の外に荷馬車を用意しておくからそこに来い」


「わかりました、失礼します」


 大飯さんは返事をして立ち上がったので、俺達も立ち上がり、とりあえず退室することにした。


「ネタプレイしか見た事ないんだけど……。それ以外のプレイスタイルってどうなの?」


 ヘイもネタプレイしか見た事はないみたいだ。


「ネタプレイ認定されてますが、自分の中で確立されたプレイスタイルですよ? そうですね、あえてもう一つのプレイスタイルなら、短機関銃や自動小銃を主体の近距離から中距離での立ち回りですね」


 そう言い、端末をいじってなんか変わった武器を出してきた。


「自動小銃のAR57と、自動拳銃のファイブセブンです。このメーカーが好きなので。短機関銃のP90をモデルにしたP130とか、SCARやミニミの後継機とか。H&K社よりは少ないですけどね」


 P90のマガジンが上に付いてるアサルトライフル型の銃って。普段マガジン刺さってるところなんか何もないし不思議な感じだ。


 アサルトライフル型にして、バレルを長くして色々反動軽減とかしてるんだろうか? けどファイブセブンはそのままなんだな……。


「近距離、中距離、遠距離が揃ったね。けど……服……は?」


「あー。もちろん他の場所で普通の選択はしますよ。けどゲーム中や街中ではコレです。目立つでしょう?」


「あぁ、確かに目立つけどよ……。手錠はまずいだろ?」


 俺は手首の腕輪みたいな物を指し、辺りを見回す。


「こっちじゃただの腕輪ですよ。重さもないですからね」


「……たしかに。こっちでは囚人の概念が違うからね。手枷足枷っていったら木の板だし」


「なら問題ないって事で」


 大飯さんはそう言って、端末をいじって銃を消したがポケットが膨らんでいる。手の平に収まる程度の大きさだし、実はポケットにリベレーターが?


「もしかしてリベレーターか?」


 俺はポケットを指し、一応聞いてみた。


「えぇ、かっこいいでしょう」


 大飯さんは、超笑顔で両側のポケットからリベレーターを取り出し、両腕を前に出した。


「けどですね……。ポケットから出すと、次のリベレーターが……。ほら」


 そして膨らんだポケットを見せてきた。


「すげー不便そう……。ポーチ的なのないの?」


「あると思います? 空から大量に投下して、隠れて近づいて一発撃って、正規軍から銃を奪うための、レジスタンスの武器ですよ」


 そう言った瞬間俺の横腹に不敵な笑みを浮かべながら銃を突きつけ、口でバーンと言った瞬間に自動拳銃を奪われ、ヘイに銃口を向けた。手が早いな……。


「とまぁ、こんな感じでリアルでは使いますが、ゲームでは……。まぁ知っての通り撃ったら捨ててです」


 大飯さんは撃ってないのに銃を捨てると、使い切ったマガジンのように十秒くらいで消えた。リロードと同じようなもんか。



「さて、宿探しですが……。どうせならギルド近くがいいですね」


「立地的に高そうだな。少し離れた場所とかどうだ?」


「そうだね。問題ないなら離れた方がいいかも。討伐に行くのに往復で十日とかあるし」


「あー。その分無駄なのか。集合住宅でもいいかな」


 大飯さんは洗濯物を干しているおばちゃんを見て、集合住宅を第二案として出してきた。


「家賃的にはそっちの方が安いかも知れないけど、いない日の方が多いと微妙そう。もうギルドで討伐に参加するの決めてるんだし」


「んー。微妙かぁ……。とりあえず集合住宅の選択は、宿でしばらく生活してみてからですね」


 大飯さんは肩を落とし、腕をだらりとさせて辺りを見回している。


「もうここで良いか。歩行距離的に門にもギルドにも近そうだし」


 そう言って建物の中に入っていった。行動力がありすぎて少し尊敬するわ。旅行とか、携帯と財布だけでも問題なさそう。


 服? ジーパンとティーシャツで、現地で服と下着を一枚買って夜中に洗ってそう。


「ってか宿の名前が凄ぇ。俺が泊まってる宿屋と比べるのもアレだけど」


魔女の一撃ぎっくりごしって……。本当に凄いね。泊まってるだけで腰が痛くなりそう。こっちの世界には俗語的な物はないのかな?」


「わがんね……」



「決まったみたいだな。身の振り方を教えてもらおうか」


 宿屋のロビーでのんびりしていたらウェスがやってきた。なのでどういう感じになったのか流れを教えたら、頭を押さえて変な顔をしている。まぁわからないでもない。だって一緒に行動してた方が管理が楽そうだし。


「契約してきました。あれ? 耳が早いですね、もういるんですか?」


「悪いけど全部話しておいたから」


「ありがとうございます。ってな訳でこうなりました、よろしくお願いします」


「多分よろしくないと思うぞ? 纏まって行動してもらいたいっぽいしな」


 ウェスは、人差し指でテーブルを叩いている。かなりイライラしているっぽいな。


「で、お前は女遊びや、気にくわない奴は殺したりするのか?」


「え? んー綺麗な女性がいっぱいいる酒場とかは行きたいですが、直ぐに殺したりはしないと思いますよ?」


「本当だな?」


 ウェスは大飯さんを睨みつけながら、確認するように聞いている。


「えぇ。なんでそんな事聞くんです?」


「二人に聞け」


 ウェスはそれだけを言って出て行ってしまった。ってかずいぶんと酷い言いぐさだな。俺は気にくわない奴じゃなくて、殺そうとしてきた奴だよ。


「んじゃまた明日」


「またな」


 俺達は大飯さんに挨拶をしてから別れ宿に帰った。



 翌朝。俺は朝食を済ませて、門が開く頃には既に待機していた。


 そしたら副支部長が荷馬車に男を一人乗せてやってきて、大飯さんが来てからヘイがやってきた。


「時間に正確で嬉しいぜ。たまに大酒飲んで遅刻する奴がいるからな。後ろに乗ってくれ。それとこいつは留守番させるために連れてきたから、気にしないで良いぞ」


 副支部長がそう言ったので遠慮なく乗らせてもらい、鐘の音と共に門が開いたのでそのまま森に向えた。時間前行動はすばらしい。



「さて、そこのオオイって奴の実力を見せてもらうぞ。極力邪魔をしないから好きに動け」


「うっす。んじゃ俺はいつもの」


「僕も」


「じゃあ、自分は中距離用ですかね?」


 俺は強化アーマーセットと、いつもの盾と自動拳銃を装備し、大飯さんは茶色が多めの迷彩を選び、ヘイはギリースーツを着ていた。


「俺が必然的に先頭か。んじゃ適当に」


「「了解」」



 しばらく森を歩くと、森に似合わない色が見えた。オークが二百メートル先に三匹ほどいる。


 俺はハンドサインで後ろの二人を止まらせ、しゃがませてから指で距離を伝え、最後に歩兵が三、スナイパーが撃てと指を動かすと、一番後ろにいたヘイのVSSの射撃音が三発聞こえ、大飯に肩を叩かれたので歩き出す。多分ヘイも大飯の肩を叩いたんだろう。


「待てお前等! 今なにした!?」


 副支部長が吠えたのでいったん止まり、俺はバイザーを上げる。


「二百歩先にオークがいたから、まず止まれ、それからしゃがめ。その後に距離と数を伝え、遠距離が得意なヘイが殺せと指示を出して、しとめたから肩を叩かれたのを合図に進んだ」


「それ、絶対お前達にしか通じないぞ? ってかオオイの協調性が見たいんだが?」


「ならどうするよ? 大飯が先頭やるか?」


「近距離での戦闘を想定してないからなー。近接武器オンリーで大飯達二人が前に出る?」


「ですかね? じゃないと自分が一回も活躍せずに終わりそうなんですが」


「あ、待って。あっちに五人いるから、交渉して一時的にパーティーを組ませてもらったら? 副支部長さんもいるし、話しは通ると思うよ」


「だな」


「どこにいるんだよ、みえねぇよ!」


 まぁ、俺達はMAPが視界内にあるし、方向くらいはわかるさ。まぁ、オークだったらどんまいだけどな。



「お、いたいた。おーい、ちょっと相談に乗ってくれねぇか?」


「す、スピナさん!?」


「本当だ、スピナさんとヘイさんじゃねぇか!」


 なんかこの間の噂で、ギルド内の評価が凄い事になってそうなんだけど……。


 そして軽く説明をしたら簡単に了解を得られたので、俺達は後ろを歩き、大飯さんが五人パーティーに加わり、臨時パーティーでの協調性を見ることになった。


 見ることになったけど、前衛が欲しいって事で、VP70のフルオートロングマガジンを持って、近接武器はロシア兵のシャベルを腰に付けて参加している。


「凄ぇ装備だな……」


「ってかスペツナズナイフも持ってるし、投げナイフも持てるだけ持ってるよ?」


 その後は軽く挨拶をし、盾持ちの裏に待機しながら辺りを見回しつつ歩き、上手く連携をとりつつ、オークが一匹なら投げナイフで先制攻撃をし、数匹ならフルオートで引き金引きっぱなしで横薙でぶっ放す。


 オークリーダーが現れたら胴体から腕に向かって撃ち、武器を落としながら殺し、会話でのパーティー内の雰囲気はもの凄く良かった。


「あのハンドガン、動画で三点バーストのは見たけどフルオートは初めてだ。一瞬で弾が溶けてるな。ってか左手にマガジン持ってるしリロードも早い。けど俺ならMP5を持つな」


「音がつながってるもんね、やばいね。あーあれだ、散弾銃風に運用してるんだ」


「あー。そう考えれば納得だ。散弾銃より軽いから移動速度が落ちない」


 もの凄く古いホラーゲームの主人公が持ってたが、なんかリアルでは珍銃扱いだったらしい、けど近距離でぶっ放せば問題は全部解決するな。



 その後は特に問題なく狩りが終わり、臨時パーティー全員を含めて荷馬車で街に戻り、協調性や即席の連携に問題はないと判断され、ギルドが進める人材って事で在中が許可された。


「試験に受かって良かったよ」


「本当だぜ。最悪俺が雇ってたぞ?」


「ありがとうございます。まぁ、何かあれば呼んでください。そちら優先で動きますので」


 その後は軽く挨拶を済ませ、夕食を三人で食べてから宿に戻り、風呂に入りに行ってフロアに立つ。



「じゃあその人、ギルドで仕事を取る訳?」


「あぁ、そうだな。多分突出した戦力に期待して、無理な狩り場に行く奴が出ると思うが、身の丈に合わない奴が高ランクを受けようとしたら、ギルドが弾くかもな」


 俺は閉店後のフロアでソーセージをかじり、ビールを飲みながらグリチネと一緒に晩酌をする。


「ふーん。長期の狩りで何かあった時に予定が合わない場合はどうするのよ?」


「しかたねぇ、そんときは諦める。あー、あいつの報告も上に行くんだろうなー。監視されてるってどうも嫌になる」


「なんでよ? 別に気にしなければ良いじゃない」


 グリチネはたっぷりとマスタードを付けてソーセージを噛みちぎり、本当に気にしていないといった感じでビールを飲んでいる。


「覗かれたり聞かれてたりって思うとな……。昼と夜の常連が二人ずつ増え、向かいの集合住宅の二階、新しく入った若い夫婦。アレ、監視役だぜ?」


「別に声なんか良いじゃない。お隣のおばさんの声なんかしょっちゅう聞こえてるし。後は窓も閉めてるし見られてるって事はないと思うわよ?」


「まぁ、お互いに声は小さいし少ないから良いとして、軋む音とか?」


 確かにお隣のおばさんの声なんか、耳をすまさなくてもしょっちゅう聞こえるしな。


「それは仕方がないわよ。ってか両隣にいれば聞こえる程度でしょ? 下にはお客さんいないんだし。なんなら窓を開けて見せつけてもいいのよ?」


 グリチネはニヤニヤとしながらソーセージをフォークで突つき、こっちを見ている。


「やめてくれ。そんな趣味はねぇよ」


 俺は目の前の羽虫を払う様に手を振り、フォークに刺さっている残りのソーセージを全て口に入れてビールで流し込む。


「ならうるさいくらいに喘いであげる」


「それも勘弁だ。今まで通りでいいから普通に頼むよ」


 俺はため息を吐き、現在進行形でグリチネから足で下半身に軽いセクハラを受けているが、とりあえずその合図にベッドの上で答える事になった。


 ってか海外の肌色の多い奴みたいにされたらちょっと考えるし萎えるわー……。





――銃器関係に詳しくない人の為の緩い武器説明――


気になったら自分で調べて下さい。


リベレーター:一部のマニアに人気。粗悪すぎて、日本軍の自殺用拳銃と間違われた。形は違うが一時期3Dプリンターで作れる銃として話題。日本では弾の入手の方が困難。


ダブルバレルガバメント:リアル変態銃。これを見た時は作者は製作者の正気を疑った。


VP70:バ〇オハ〇ード2の男主人公のハンドガン。評価を見ると色々残念な性能らしい。WW45ではフルオート機能がある。


P130:P90の後継。架空銃。


ファイブセブン:P90の弾を撃てるハンドガン。


AR57:P90をアサルトライフルにした感じ。


MAC10 太いサプレッサーと、高い連射力で有名。作った会社がつぶれる。著作権を買い取った会社も数社潰れる。

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