英雄の丘



バロア帝国第二皇子である私は魔法が使えない。

この事実を未だに受け入れることが出来ずにいる。


なぜなら魔法の才能が絶対の国だからだ。

そのせいで皆が私を落ちこぼれだと蔑んでいる。

父からは空気のように扱われ、母からはゴミのような仕打ちを受け、他の者は兄と比較し、皇帝である父にごまをっている。


だから剣を振るった。 両親たちを見返すために。

しかし私の剣では魔法で強化された斬撃に到底太刀打ちできない。

そんなトラウマの日々があの場所へと私を導いた。




先日、朝稽古が終わると落ちこぼれの自分に戻るのが嫌でとある場所へと向かった。

それは英雄の丘と言う場所だった。


英雄の丘とは簡単に言うと、神話に出てくる英雄を祀っている場所である。


なぜだか分からないがこの丘にいるとすごく落ち着いた。そして昼寝をするのが日課となっている。


寝ると無論、夢を見るのだが不思議な夢をよく見る。


それは祀られている英雄たちが戦う夢だった。その英雄たちの剣術を真似をして修行をしている。


今日戦っているボロボロのローブの男は今までと別格の強さだった。 鎌を持っており、死神のように見えた。

鎌から放たれる斬撃は神速の域に達している。

そしてすべての敵を倒したあと、その男はローブを深く被り、私の目の前で止まった。


「あなたは神を信じますか?」


(神? 信じる? こいつはいきなり何を言ってるんだ。)


「あなたこそ何を言っている。」


──なっ! 心を読まれててる。


「何でも分かる。 あなたと私は同じだから。 」


(同じ……)

心臓の鼓動が速くなるのが分かる。この気持ちは何なんだ。


「あなたは分かっているはずだ。 この丘に来たときから」


「そうだ…… ずっと違和感があった。 私は知っているはずだ、 いつまで落ちこぼれのふりをしている…… 」




閉眼し、確かめるように小声で言った。


冥道めいどう一ノ説 千の短い鎌サウザンド・ショート・サイス



地面から黒い鎌が無数に出現した。




この地の魂の欠片が冥道の力に働きかけ、思い出すことができた。



ふと我に返ると、知らぬ間に眠りから覚め、物騒に浮いている無数の鎌を地面に戻した。


男はローブだけを残し消えていた。

記憶が戻った余韻に浸っていると美しい黒い髪の美女が現れた。



「ごきげんよう、お久しぶりですね。 今の名前は確か…………」


「クレイ・リエーラ・ルベラです。 お久しぶりです、勇者アリア。 また急に現れましたね」


「今は勇者ではないですよ。 ただの美女です。それと硬い口調はお止めください。 アリアと呼んでください。これからあなた様にお仕えするのですから」


ん? よく分からなかったから無視しよう。



「ところでなんでまだ若い姿生きている。 少し怖いぞ」


「魔王を倒した際に私達は不死の呪いをかけられたのです。 民に気付かれるのを恐れ各地へ散ることとなりました。 そして今、あなた様が前世の記憶を取り戻した様子をお見受けしたので参りました。 恩を返す時がきたこと幸せを感じています」


「まさか生まれてからずっと側にいたのか?」


「いいえ。 たまたまクレイ様の力が帝国にいた私に伝わったのです」


「しかし今の私は落ちこぼれ。 こんな私といても得はない」


「そんなことはありません。 あなた様は世界をまとめることができる御方なのですから」


落ちているローブをアリアから渡され羽織ると、ローブから不吉な雰囲気を感じた。そしてボロボロだったローブが新品同様になっていた。


「昼食の時間だ。 遅れるとまた食事を抜かれてしまう」


「大変ですね」


アリアが困った顔をしながら共に城に向かった。


そして皇帝の間にてあることを告げられた。




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