黒の皇帝

かかっ

最強のスラム街

プロローグ


古の時代、冥界の王にして魂を導くとされた生と死の神がいた。

冥界の王も魂の一つだったが月の精霊に導かれ膨大な量の魂と融合し、冥界の王となった。

月の精霊と言ってもただのフクロウだ。


ある日、冥界に勇者パーティーが訪れた。


「勇者アリア、賢者マティ、侍シスイに光の巫女まで来たのですね。 ここは生きている人が来る場所ではありません。 すぐに帰りなさい」

冥界の王はボロボロのローブをなびかせながら後ろを向き、去ろうとした。


「 お待ち下さい、冥界の王よ。 急な訪問をしたことは本当に申し訳ない。しかし、地上で魔王が世界を支配しようしている。 冥界の王の力なら、魔王を食い止めることができる。 どうか…… どうか力を貸してほしい 」


地上が騒がしくなっていることは魂と触れ合っている中で知っていた。


勇者たちをよく見ると、服は砂らまみれで所々破れており、顔はやつれていた。


「どうやってここへ来たのか分かりませんが、あなたには背中の聖剣があるではないですか」


勇者はゆっくりと聖剣を抜いた。


「この通りだ…… 」


刀身が半分無くなっていた。


フードの中からうっすらと見える青く光る眼。 その儚く美しい眼でよく見ると確かに聖剣は折れていたがまだ力は宿っていた。


「ではその折れた剣をどうにかしよう。 聖剣の力の源である四天龍の記憶を読み覚まします」


冥界の王は折れた聖剣に手をかざし力を込めた。


青黒く輝く光は聖剣全体を覆い、消えるころには剣が新たな形となっていた。


聖剣ではなく、魔剣とも言えない不思議な力だと勇者は感じた。


そしてマティに灰の小袋、シスイに漆黒の手ぬぐいを与えた。


「すまない……ありが──」


勇者たちが感謝の気持ちと共に顔を上げた瞬間、地上に生還していた。



そして魔王と戦い、地上を救った。



しかしその後勇者たちは姿を消した。



冥界の王は、力を注いだ代償として消滅してしまった。



そして永年の時間が過ぎた。



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