第15話 班を決めよう
大幕高校の春の行事の中にオリエンテーションというものがある。
平たく言うとクラス内の仲をもっともっと深めようという親睦イベントなのだけれど、まずイベント起こせば仲良くなれるという発想がリア充のそれ。そんなことをしても結局楽しむのか陽の者のみであり、我々陰の者はこそこそと時間をやり過ごすしかないのだ。
あまり楽しいイベントではなかった為にすっかり記憶の奥底に眠っていたけど、確かに一年の時にもそんなことをしていた。
一年生は校内オリエンテーションということで学校内でいろいろとさせられた。あれはとにかく地獄だった。何をしたかはあまり覚えてないけど、辛かったことだけは覚えている、
そして、二年生はどうやらバーベキューをするらしい。三年生になると遠足になるらしく、学年を重ねるごとに豪華になっていくシステムのようだ。そんなんいいから金だけくれないかなあ。
そもそも何でバーベキューなの。発案者絶対リア充のやつだよ。リア充ってのはとりあえず肉焼きたがるんだよ。でも肉には大して興味があるわけではなく、肉を焼きながら皆でワイワイとしている過程自体に意味を見出している。故にリア充。
俺には到底追いつけない領域に、どうしても溜め息が出る。
そして、バーベキューといえばもう一つ憂鬱なことがある。
昨年のオリエンテーションはクラス単位で動いていたが、バーベキューともなればそんな大人数でいるとまとまらない。
つまりどういうことかと言うと、ぼっちが嫌うあの特殊イベントが発生するのだ。
「よし、それじゃあグループを決めろ。好きに決めていいから、誰かが余るようなことにだけはならないようにな」
班決めである。
友達いる奴はいいよ。おいなろうぜ! ういー! くらいで終わるだろうから。もう五秒くらいで済ませて、あとは来たるイベントに胸膨らませながら雑談するだけだから。
でもぼっちは違う。
声をかける相手がまずいない。どうしようもない状況で、周りは着々とグループを決めていく。おおよそ決まったところで、決まっていない我々ぼっちに視線を向けるのだ。早く決めろよ、と。余りものが出てしまえば、くじ引きか最悪の場合は出席番号順になる。仲のいい友達と楽しいイベントのはずが、よく知りもしない奴らとの地味めなイベントになり下がる。それを俺達ぼっちのせいにする。
俺達が悪いんじゃない。
自分のことしか考えずに周りを見ない奴らが悪いんだ。実際はどっちが悪いかなどは関係なく、奴らは徒党を組み、少数派にヘイトを向けて全員で襲いかかってくる。悪でないものを悪に仕立て上げるのだ。全くもって恐ろしい奴らだぜ。
なんてことを考えているうちに、既に教室内では移動が起こっており、各々がさっそくグループを決めていた。
ここからが地獄なのだ。
そう、思っていたのだが。
「筒井君。よければ、グループ組みませんか? 私、友達いないもので」
「羽島……」
羽島愛奈。
何を隠そう、俺のゲーム仲間でありどうやらぼっち仲間でもあったらしい。今回は声をかけてきた羽島は女神に見える。
「ダメ、ですかね?」
「いや全然。むしろこっちからお願いしたいくらいだ」
「よかったあ」
俺の返事を聞いて、羽島が胸を撫で下ろすように気の抜けた声を出す。
「ま、俺達が二人になったところでそれ以上の人数を集めれるかが問題なんだけどな」
「うっ……、厳しい現実をつきつけないでほしいです」
「見るしかないんだよ、その現実をな」
そう。
確かに完全ぼっち状態を免れたのは事実だ。ぼっちとぼっちが手を組めばそれは立派なグループだ。
でも今回は、一グループ四人から六人という縛りが邪魔をしている。どうして二人グループを許してくれないんだ。
二人ともコネクトがないから手を取り合ったが、それ以上の繁栄は見込めない。なぜなら友達いないから!
「ねえ、筒井くん」
どうしようかと頭を抱えていると、後ろから声をかけられた。
誰だ、校内で俺に声をかけるやつなんて限られてるぞ……羽島か、先生か、それか笹倉か。
「笹倉、さん?」
「そうです。君の! お友達の! 笹倉木乃香です!」
やけに言葉言葉を強調しながら笹倉は言ってくる。
そういえば今朝のメッセージの真相も結局は謎のままなんだよな。何か怒ってるような感じだったけど、何だったのか。
「どうかした?」
「いやね、友達同士がグループを組むわけだから、筒井くんと組もうと思って」
「あ、あのー、約束は……」
一応、校内ではあまり関わらない方針でお願いしますとは言ってあるのだけれど、お忘れになられたのかな?
「ん?」
俺はあんまり人の感情とか汲み取るのあまり得意じゃないけれど、これはあれかな? もしかしなくてもやっぱり怒ってらっしゃるのかな?
だって、何か顔が怖い。
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