第23話
学校に行くと教室の入るなり、いずみとさゆりが、
「ねえ、昨日途中からいなくなったけど、どうしたの?お姉さんって・・・誰?」
二人の声はそろって聞こえた。
「えっ、ああ・・・ね」
「あの人なの?」
「うん、後ろからだけど、あたい見かけた。背の高い人ね」
いずみはじっと杏里を睨んでいる。何かを隠しているッと思っているのかも知れない。
杏里はどう答えようか、迷ったのだが、
「知っている人に会ったのよ、それで・・・」
こう言った。
「誰なの、この島に知り合いなんて、杏里・・・いたの?」
いずみは思いっきりよく聞いてくる。
「へへ・・・」
杏里は笑った。ごまかす気はなかったのだが、今は秘密にしておきたかったのである。
「そんなことより・・・ねえ、ねえ、一人ぼっちの羊さんに名前を付けに行かない?」
いずみはさゆりの顔を覗き込み、しばらく考えているようだった。
「ああ・・・あの子ね」
「うん、いいね。学校が終わってから、行こう。ねっ」
さゆりは賛成し喜んでいる。
いずみも、
「うん」
と頷いた。
もう、こんな約束が交わされると、学校の勉強なんて頭に入らない。早く終わ
れば、いいのに・・・と思う。こんな時に限って時間のたつのが遅い。
「そこの三人、何を見ているの?」
牧田先生が近付いて来た。いずみとさゆりは気付いたが、杏里はまだ窓の外を
見ていた。
「杏里!」
いずみは杏里の背中を叩いた。というのは、いずみは杏里の後ろの席だったの
だ。
「こら!杏里さん。何か、見えるの?」
牧田先生は国語の教科書で杏里の頭をちょっこと叩いた。
やっと気付いた杏里だったが、何処かに夢の小国でも行っていたのか、ぼんや
りと牧田先生を見上げた。牧田先生はまだ結婚はしていない。なのに、ちょっぴ
り太り気味に見える。なぜだろう・・・と杏里は考えた。だが、まだ八歳の彼女に
は分かるはずもなかった。でも、ひょっとして・・・と杏里は思うのだった。牧田先生のお尻はすっごく大きいのが気になっていた。
昼食が終わり、三人は一目散に牧場に走った。
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