第19話
その夜、杏里はしばらく眠れなかった。
「あのお姉さん・・・」
また、会いたい・・・と、思った。
「何をしているんだ?」
弘美はテーブルに広げた四五枚の紙を覗き込んだ。
「今度の日曜日に厳島神社の祭りの案内ですよ」
「あの神社は六月の暴風雨で壊れてしまったんじゃないのか?」
「そうなんです。一度立て直すのは諦めて、祭りももうしないと決めたのと違うんじやないか」
「でも、そう決めてから悪いことが続けて起こったのよ。だから、祭りもやった方がいい、と話が決まっていたらしいですよ。うちには知らせが来なかったけれど・・・まあ、うちはこの島の人間ではないのだから仕方がないですね」
「まあ、そういうことだ。ということは、神社はもう出来ているのかな?」
「ええ、雪が降る前に祭りをして、みんなで島の安全を祈願しようということになったんですって・・・」
「そうか。良いことじゃないか。杏里も喜ぶんじゃないのかな」
「もう寝たのかしら?」
「まだ、起きているんじゃないか?知らせてやろうか・・・」
「そうですね。あなたから、お願いしますよ」
弘美は二階に上がって行った。家の中はひんやりしていた。もうすぐ厳しい冬が来る。弘美もみさ江も、この島の冬がどんなに厳しいか、この島に来て五年になるが、なかなか慣れないでいた。この冬に備えて、特に食料品を買っておかなくてはならない。あの子も、きっと驚くに違いない。みさ江は少しだけど、杏里が哀れに思った。
「杏里、起きているかい?」
返事はなかった。
「寝たのかな・・・明日にするか」」
と、弘美は思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます