第10話 これからの生活を思う
杏里は自分だけの部屋があるのに、すごく感激していた。
(今まで、なかったのだから・・・)
母と二人たけ小さな部屋だった。それなりに、快く幸せを感じていた。
ここには机もあり、本棚もあった。そして、ベッドが窓際にあった。窓はそれ程大きくはなく、ガラスがはめ込んであった。
薄いピンクのシーツのベッドには掛かっていた。杏里は恐る恐るそのベッドに座った。
「柔らかか・・・」
だった。これまで布団ばかりで寝ていた。だから。ベッドが珍しかったし、ピンク色のシーツが心地よかった。さつき、弘美は、
「今日は疲れただろうから、ゆっくりとお休み。明日は、学校に挨拶に行こう。私も同じに行くからね」
といって、杏里の部屋から出て行った。
明日のことを考えると、杏里はなかなか眠れなかった。怖くもなかったし、不安なんて少しもなかった。ここに来る時、あっちの学校の友だちと別れるのはすごく寂しかったけど、
「仕方がない・・・」
こととあきらめるしかなかった。
この島の学校がどの辺りにあるのか、杏里は知らない。想像するに、大きな島ではないから、そんなに多くの子供はいない・・・と思った。
「でも、いい」
と、杏里は思った。
誰もいないのではないのだから・・・と自分の気持ちを高めた。それに、
この島に着いた時からの印象は、彼女にとってまさに夢のような場所だったのたから。新しい友だちと、
「きっと仲良くなれる」
と、杏里は自信を抱いた。
杏里は目を閉じ、そばたてた。
静かで柔らかな波の音しか聞こえて来なかった。窓から外を見ると、海が黒く見え、波の音が、
「こっちにおいで、
と、囁いて来ている。
「だめよ」
と、杏里は微笑む。
ここは・・・本当に、
「夢のような所・・・」
だった。
「お祖父さん、明日学校に行くから、早く寝なさい」
と、言っていたけど、
「眠れない」
杏里は少しも眠くなかった。
でも・・・
杏里は心地よく眠ってしまっていた。そこは、まさしく・・・本当の夢の世界に、杏里はさまよい、遊んでいた。
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