第4話:爪斬

 俺の動きをリンメイがしっかりと見ている。

 驚愕しているようだが、眼を逸らす事なく学ぼうとしている。

 俺は指先に魔力を込めて強化し、モンスターの急所をえぐり取る。

 血管を断つようの首や四肢の急所を狙う。

 魔力の量次第で首すら断つ事ができるので、モンスターは瞬殺だ。


「よく見ていたかい、同じように戦ってもらうよ。

 まずはリンメイの能力である爪を出してくれ。

 その爪を上手く活用すればリンメイは誰にも負けなくなるよ。

 リンメイは猫獣人だから、上手く剣を持てなくて当然なんだよ。

 リンメイは猫獣人らしい戦い方をすべきなんだよ」


「うん、分かった、頑張ってみる」


 そう答えたリンメイに迷いは感じられなかった。

 俺の戦い方を見た事で、自分の本性にあった戦い方を悟ったのだと思う。

 リンメイは人間になりたかったのかもしれない。

 猫獣人であることを認めたくなかったのかもしれない。

 それとも誰かに騙されて人間のように戦わされていたのかもしれない。

 この事は焦らずじっくりと見極めていこう。

 勇者パーティー以外の敵がいるかもしれないから……


「みぎゃあああああ」


 リンメイが独特の雄叫びをあげながらモンスターの群れに突っ込んでいった。

 俺の手本通り、立体的に飛び跳ねてモンスターに傷を与えている。

 俺と同じように一撃で首を断つことはできないが、確実に生命力を削っている。

 血管を断てば、血を失って確実に死に近づく。

 生命力が飛び抜けて強いオーガであろうと、徐々に死に近づいている。

 問題はリンメイの体力が続くかどうかだが……


「リンメイ、体力を回復させるから、迷うな」


 リンメイは有利に戦いながらも、一向にモンスターを絶命させられないことに不安になっているが、支援さえ的確なら何の問題もない。

 突出した俊敏性から極端に落ちる他の能力を補う方法はいくらでもある。

 だがまずは自分の本当の能力と限界を知って欲しかった。

 その上で足らない所を補う方法、助け合える仲間を見つけて欲しい。


「はい、頑張ります」


 元々種族的に臆病なリンメイは、無理な攻撃をする事なく、確実な回避を優先してモンスターと戦っている。

 今レベル五のリンメイなら、ここの二十階層のモンスターを斃せば一気にレベルが上がり能力も向上する。

 その能力の向上がリンメイの生死を分けるだろう。

 相手は姑息で残虐非道な勇者パーティーに加えて、冒険者ギルドまでが敵になってるのだ、少しでも能力を向上させるてリンメイの安全を高めたい。


「よくやった、この調子で次のモンスターを斃してもらう。

 だがその前に、リンメイにあった武器と薬をプレゼントしよう」

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