第3話:天才と紙一重

「パーティー結成願いを出したいんだが」


 俺は仲のいい受付嬢シャミーに頼んでみた。


「残念ですがカエサルさんは降格処分を受けたばかりなので、リーダーとしてパーティーを結成することができません」


 シャミーが申し訳なさそうに言ってくれた。


「じゃあこの子、リンメイではどうだい」


「この子がリンメイさんですか。

 リンメイさんも勇者パーティーに眼をつけられているようですね。

 まだF級のリンメイさんがリーダーになって、元A級のカエサルさんをメンバーに入れるのはおかしいのですが、私も勇者パーティーの遣り口には腹を立てていたのです、いいでしょう、受付させていただきます」


 シャミーがいい笑顔で請け負ってくれた。

 ギルドを辞めてでも、冒険者を支援する受付嬢の意地を通してくれるようだ。

 いざとなったら一緒の他の街行こうと誘おう。

 いや、シャミーの覚悟に応えるのなら、俺も勇者達を殺すくらいの覚悟をしなければいけないな。


「もう一度鑑定をして、リンメイに合った戦い方を教えてやるよ」


「うん、お願いします」


 俺はさっき一度鑑定していたが、もう一度リンメイを鑑定して、同時に俊敏性に秀でた斥候職の冒険者と比較してみた。


名前 :リンメイ

年齢 :14

種族 :猫獣人

職業 :戦士

レベル:5

体力 :97

魔力 :20

攻撃力:73

防御力:64

俊敏性:1097

スキル:爪斬


名前 :ラウネ

年齢 :16

職業 :斥候

レベル:18

体力 :110

魔力 :64

攻撃力:123

防御力:110

俊敏性:145

スキル:短剣術・聞耳・忍足・掏摸


 こうして見比べてみたら一目瞭然だった。

 リンメイは間違いなく天才だった。

 俊敏性だけなら勇者パーティーを遥かに凌駕している。

 それに天から与えられたスキルを見れば、どういう戦い方をすべきか明らかだ。

 なのに、リンメイは戦士職を選んで剣を持って戦っていたという。

 これは明らかな職業選択ミスだ。


「今から一気に二十階層まで下りるけど、何の心配いらないから。

 リンメイの速さなら十分についてこれるし、十九階層までのモンスターなら振り切って逃げられる、大丈夫だよ」


 俺はそう言ってリンメイの先を駆けた。

 リンメイがついてこれられるように、十分気をつけてゆっくり駆けた。

 俺は手加減して駆けたが、リンメイの俊敏性は人間としては非常識なレベルだ。

 だからこそ、勇者達も到達していない深さまできたのだ。


「今から手本を見せるから、よく覚えておくんだよリンメイ。

 リンメイの周りには防御結界を展開しているから、何の心配もいらないよ」


 俺はリンメイにそう声をかけて、リンメイの俊敏性でできる程度の動きで、左右上下の壁を蹴って立体的に動き、素手でオーガチャンピオンが率いるモンスターの群れを撫で斬りにした。

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