第2話:降格処分

「カエサルさん、今日から降格処分でC級冒険者です」


 あいつら、本当に性格が悪いな。

 一旦は降格処分まではしないと言いながら、裏から手をまわして騙し討ちのようにして降格申請をしやがった。


「抗弁したいので手続きを頼む」


「残念ですが、すでにギルドマスターの決済が終わっています」

(ここだけの話ですが、ギルドマスターは脅迫されたようです)


 仲のいい受付嬢が小声で教えてくれた話では、勇者パーティーがやってきて、降格処分を受け入れなければ他の街のギルドに移籍すると言ったそうだ。

 冒険者ギルドを経営するうえで、稼ぎ頭の勇者パーティーに移籍されるのは受け入れられない話だろう。


(他のパーティーには、カエサルさんメンバーに加えないようにと、武器をちらつかせて脅かしたそうです)


(ありがとう、ソロで細々とやっていくか、他のギルドに移るか考えるよ)


 さて、どうするのが一番だろうか。

 ここに残って勇者パーティーを殺す心算で競い合ってもいいが、争いごとは嫌いだし弱いモノ虐めはしたくないしな。

 他の街のギルドに移籍して、勇者パーティーの百倍くらい稼いで、勇者パーティーとここのギルドを悔しがらせる、穏やかな復讐の方が俺の性格向きだな。


「ああ、どうしよう、このままじゃ売春宿に売られちゃうよ。

 だけど……あいつらの圧力でパーティーには入れてもらえないし……」


 道の真ん中に深刻な顔でブツブツ言っている美少女がいる

 あの子は勇者が陰でやっている金貸しから借金していたリンメイだったな。

 珍しい金色の猫獣人だから、売春婦にすれば儲かるとフィロイが上機嫌で言っていた記憶がある。


 才能があるのは分かっていたから、借金なんか簡単に返せると思っていたけど、まだ才能が開花していないから、パーティーに入れないようなら厳しいな。

 それにしても、フィロイの奴は悪逆非道の限りを尽くしているな。

 よし、決めた、正面から戦ってやろうじゃないか。


「よお、困っているみたいだね、リンメイ」


「え、あ、あんた、勇者パーティーの奴だね」


「いや、いや、いや、もう違うよ。

 昨日フィロイに冤罪を被せられて追放されたんだよ。

 しかも二階級降格処分までされてだ。

 だからもうフィロイとは無関係だから、安心してくれよ」


「……ほんとうかい、また私を騙そうとしているんじゃないの」


 やっぱりか、リンメイはフィロイに騙されて借金したんだな。

 うむ、リンメイを助けて借金を返済できるようにすれば、フィロイの鼻を明かせるし、リンメイも自由にしてやれるな。


「おい、おい、おい、俺は関係ないよ、全部フィロイがやった事だよ。

 信じられないなら、今から一緒にギルドに行こうや。

 そうすれば俺が勇者パーティーを追放になった事も、降格処分になった事もはっきりするから」

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