03 待っててと言ったのに

 その日。


 いつものように。人じゃないものから街を守っていて。


 それに、出会った。


 スカートも。


 上着も。


 彼女のものだった。あの日の、彼女が。着ていたもの。


 待っててと言って消えた、彼女。


 目の前に。


 人ではないものになって。目の前にいる。


 腹の辺りから、紅い何かが噴き出していた。何か、特殊なもので刺されているらしい。


「ねえ」


 声を。


 声を聴かせてよ。


「待ってたよ。わたしは」


 あなたを。待ってたのに。


 目の前の彼女は。もう。人じゃない。


「待ったのに」


 どうしようも、なくなってしまった。


 街を守るために。彼女を消すことが。


 自分には、できなかった。


「ごめんね。わたしも一緒にいてあげるからね」


 彼女だった何か。こちらに、覆い被さってくる。


「待ってたのに」

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