第3話 出会い

 そろそろ食料が少なくなってきたな。


 ここで生活しだして1年が経とうとしていた


 ミライさんが書き残した紙によれば、この「ジャパリバス」とかいうのに乗れば自動でミライさんのところに行けるらしいが大丈夫だろうか…何か嫌な予感がする。


 まぁ、俺もここを出る準備をするか。そうだ、久しぶりに俺が最初にいたシェルターに行ってみるか。途中の俺がミライさんと知り合った建物にも寄っていこう。


 懐かしいなぁ。ちょうど2年ほど前だったか?俺がここでミライさんと知り合ったのは。あの頃はとても楽しかったな…。ミライさんが俺にカレー食わせてきたんだっけ、あのカレーはおいしかった。


 一通り中を見通した俺はシェルターのほうへ歩き出した。この道を通るは1年ぶりか、周りは相変わらず何も建っていないが懐かしい感覚がする。


 着いた。ここに入るのも一年ぶりか。ん?こんなに食料が余っているとは。どうせここを出るんだ。この食料がなくなるまでここで生活していくか。


 お、これは。俺が初めて貰ったパズルじゃないか。少し埃をかぶってしまっている。誇りを丁寧に拭き取った俺はあることに気が付く。これ、ミライさんがよく言ってたタイリクオオカミじゃないか?


 藍色の髪にオッドアイが特徴の子。ミライさんが話していた容姿にそっくりである。


 腹が減ったな、とりあえず今ある食材で何か作るとするか。


_____


 それから一か月が経って、現在に至る。


 さて、今度こそ行くとするか。このタイリクオオカミのパズルともお別れか…なんだか寂しいな。


 シェルターを出た俺は足早に「ジャパリバス」がある建物に向かう。道中の殺風景さはいつまでたっても変わらない。


 目的地に着いた俺は早速「ジャパリバス」に乗り込んだ。するとバスがしゃべりだした。


「目的地ハ ジャパリパークノ パークセントラルデ 間違イナイネ?」

「うわっ、何だこの乗り物、しゃべった?」


 声を出して驚いたのは初めてだよ。こいつぶん殴っていいかな?


「僕ハ コノバスニ搭載サレタ ラッキービーストダヨ ヨロシクネ。」

「は、はあ、そうですか。ご丁寧にどうも。」

「目的地ハ ジャパリパークノ パークセントラルデ 間違イナイネ?」


 ミライさんはジャパリパークにいるのか。


「あぁ、間違いない。すぐに連れてってくれ。」

「分カッタヨ 発進スルカラ 落チナイヨウニ 気ヲ付ケテネ。」


 車輪がついていたし、ただ走るだけじゃないのか?とりあえず忠告には従っておこう。


「うわっと。」


 少し揺れたかと思うと、あろうことか宙に浮き上がった。どうなってるんだこれは。


「コノバスハ 君ヲ運ブタメニ 改造サレテイルヨ 言ッテ無カッタカナ。」

「言われてねえよ!」


 やっぱこいつぶん殴っていいかな?いやダメだ。今殴ったらおそらく地面とハグすることになるだろう。我慢だ。


 しばらくするとラッキービーストが警報音のような音を鳴らすとともにジャパリバスの動きが止まった。


「どうしたんだ?」

「燃料ガ切レタヨ 解決方法ヲ 検索中 検索中 アワ アワワワワワワワ」

「お、おい、ここは空の上だぞ?どうしろっていうんだ?」


 やっぱこいつぶん殴っていいかな?いや、殴る。安全にジャパリパークに着いたら絶対に殴る。そんなことを考えていたが、現実は非常である。


「丁度コノ下ハ ロッジアリツカノ近クダヨ コノママダト 君ヲ目的地マデ運ベソウニナイカラ ココデ降ロスネ。」

「は?」


 その瞬間、俺の体は重力に引かれだした。


 この状況…夢で見たぞ。


 どうやら今日は俺の命日らしい。


 空気が俺の頬をかすめていく。


 体が雲を貫き、地上が見えた、そこには島があった。


 あれがジャパリパークか…そんなことを考えていると俺はあることを思い出した


「ジャパリパークは良いところですよ!!」


 夢でみたあれはミライさんの話だったのか。タイリクオオカミの話が出てきたのも納得できる。


 これが走馬灯ってやつか。そう思いながらも地上を見るともうすぐ地面につくみたいだ。こんなことになるならあのラッキービースト殴っとくんだった。殴らなくても地面とハグをすることになるなんて思ってもいなかったよ。


 覚悟を決めた俺は、


 そっと目を閉じた時、


 意識はそこで途切れた。


_____


 気が付くと俺は、部屋の中で寝ていた。


 死後の世界ってやつか?それにしては地味だな。そんなことを思っていると誰かが部屋に入ってきた。


「あ、目が覚めましたか?」


 そこには金髪の真ん中に黒髪が混ざった特徴的な髪をした女性が立っていた。こんな美女に導いてもらえるとは。現世で何かいいことしたっけ?


「いやー急に空から降ってきたのでびっくりしましたよ~。」

「ここは天国…ですか?」

「面白いことをいいますねぇ、まぁ無理もないですか。ここはロッジアリツカです。そして私はここの管理をしてますアリツカゲラと申します。」


 んん?なんか思ってたのと違うな。体に痛みもないしきっとこれは夢だ。もう一回寝て起きればそこは天国のはず。


「あぁ~寝ないでください。あなたは生きてるんですよぉ~!」

「俺はどうやって生き延びたんですか?」

「私が助けたんですよ、アミメキリンさんが『空からフレンズが落ちてきてる!』なんて言うからびっくりしましたよ。」


 脳の情報処理が追いついてないな。この人は空から降ってくる俺を助けたって言うのか?どうやって?疑問は残るがとりあえず感謝しておこう。


「助けてくれてありがとうございます。ここってジャパリパークなんですか?」

「そうですよ〜、どこか怪我とかございませんか?急いでいたのでかなり雑に助けてしまったのですが…」


 ふむ、言われて気づいたが背中と足がかなり痛む。プラシーボ効果ってやつか?立つのがやっとだな。雑に助けたって言うけどどうやって助けてもらったんだ?


「背中と足が結構痛みますね。立つのがやっとかも。ところでどうやって俺を助けたんですか?」

「空から降ってきたあなたを私がキャッチしたんですよ。私、鳥のフレンズなので空を飛べますからね。」


 ミライさんがフレンズは動物の特徴も持っていると言っていたが鳥のフレンズは空を飛べるのか。フレンズって凄いな。


「背中と足がかなり痛みますね。立つのがやっとかもしれないです。」

「でしたら痛みが引くまでここで休んでいってください。」

「すみません。数日お世話になります。」

「何かあったら呼んでください、力になりますから。」


 そういうとアリツカゲラさんは部屋を後にしていった。


 はあ、しばらくここで世話になることになるのか。まあ静かなところだし落ちついて泊まれs


「落ちてきたフレンズがいるのはこの部屋ね!!!!」


 あー、うん。さっきの取り消しで。


「えっとぉ…あなたは?」

「私は名探偵アミメキリンよ!そして今からあなたが何のフレンズか当てて見せるわ!!その姿、時間、そして空から落ちてきた、これらの証拠からして…」


 ほう、いったいどうゆう結論になるんだ?


「あなたはニワトリね!!!!」


 なかなか面白い解答じゃないか。ちょっと意地悪してみるか。


「俺がニワトリだとしたら空から落ちてきた説明はどうするんです?」

「あなたは鳥なのに飛べないというのを克服するために他のフレンズに空に運んでもらっていざ飛ぼうって時に飛べなくて落ちてきたのよ!!!」


 ふむ、なかなか鋭い。だがその推測には決定的な間違いがある。


「じゃあなんで俺を連れてきたフレンズは俺を助けなかったんだ?」

「うぐ、それは…えっとぉ…」


 俺ってこんなに性格悪かったのか…この子いじめるのめちゃくちゃ楽しい。


「俺はニワトリじゃないよ。」

「んなっ、そんな…名探偵である私が間違えるなんて…」


 迷探偵の間違いじゃないのか?やべ。泣きそうな顔してるんじゃん。これくらいにしとこう。


「でも考え方はとても良かったと思うよ。あと一歩だったね。まあどれだけ推理したとしても俺が何かはここの誰にも分らないさ。」

「じ…じゃああなたはなんのフレンズなのよ?」

「俺はフレンズじゃないんだ。ただのヒトだよアミメキリンちゃん。」

「ヒト…?じゃあかばんさんと一緒じゃない!」


 かばんさん?俺とミライさんのほかにも人がいるのか?


「そのかばんさんってどんな人なんだ?」

「パーク中を旅をしていろんなフレンズを助けていったとっても頭のいい子よ!ちょっと前に島をでて他のエリアに行ったわ。」


 ほかのエリア?ジャパリパークって広いんだな。その辺の動物園くらいかと思ってた。


 と、そんな話をしていたらお腹が減ってきたな。


「腹減ったな…」

「お腹がすいたの?じゃあジャパリマン貰ってくるわね!!」


 そういうとアミメキリンは足早に去っていった。そしてしばらくするとジャパリマンとやらを持ってきてくれた。


「これがジャパリマン?」

「そうよ!じゃあ私は先生のところに行くから!またね!」


 これがジャパリマンか…ミライさんが昔出してくれた肉まんとかいうのに似てるな。


 そう思いつつ一口食べる。


 ん~肉まんとは違うがおいしいな。いったいどうやって作られているんだ?


 そのまま食べ進めていたらあっという間に食べきってしまった。


 よし、これでしばらくは大丈夫だろう。アミメキリンちゃんもいなくなったしようやくゆっくりできr


「失礼するよ。」


 あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛


 頼むから休憩させてくれよ…と思っていたが入ってきたフレンズの姿をみてそんな気持ちは吹き飛んだ。


 藍色の髪、特徴的な耳、そして引き込まれるようなオッドアイ。この子がタイリクオオカミさんか…


「…」

「お、いい顔頂き♪どうしたんだい?そんなに私の事見つめて。照れるじゃないか。」

「ご、ごめんなさい。綺麗だったのでつい見とれてしまいました。」


 ん?あれ?俺今すごいこと言ったな。初対面でこんなこと言うってどんだけ取り乱してるんだよ。落ち着け俺、深呼吸だ。


「ウフフ、久しぶりに言われたなぁそれ。なんだか懐かしいよ。私は作家のタイリクオオカミ。よろしくね。」

「よ、よろしくお願いします。」

「空から落ちてきているのが見つけれられて良かったね。最近この辺りに地面を潜るセルリアンが出るんだよ。」


 セルリアンについてはミライさんに聞いていたけどそんな特殊なセルリアンがいるのか?怖えぇ~。


「あたりを散歩していたら地面からガブリッ!!君はセルリアンに食べられたらどうなるか知っているかい?一度食べられればもう出られない。そのまま体が溶かされて…」

「も、もういいです。いいです。十分…」

「冗談だよ、冗談。またいい顔頂いたよ♪」


 そんなやり取りをしているなか近づいてくる足音があった。


「先生!やっと見つけましたよ!」


 アミメキリンちゃんだ。というか先生ってタイリクオオカミさんのことだったのか。作家とか言ってたしあとで作品を見せてもらうことにしよう。


「おや、もう私を呼びに来たのか。今日はこれで失礼するよ。しばらく泊っていくんだろう?」

「そのつもりですね。」

「フフッ、じゃあまたお話ししようか。もっといい顔見せておくれよ♪」

「ハハハ…楽しみにしておきます…」


 そう返事すると二人は部屋を去っていった。


 外は暗いな。もうそんなに時間が経っていたのか。背中と足も痛むし。今日はもう休むか。ここを探索するのは痛みが引いてからでいいだろう。


 そして俺は眠りについた。


 

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