第16話

馬君は僕の顔をみると、うなだれて小さな声で言いました。

「ごめんよ。別に君を利用するつもりなんかなかったんだ。君があのこのことを、とても好きだって知ってたから、もし君が拾ってくれたら、きっとあのこに会えると思ったんだ。それに、僕なら君の役に立てると思ったし・・・」

最後の方は、ほとんど聞き取れないほど小さな声になっていました。

「ねえ、僕のこと、許してくれるかい。」

 僕は黙ったまま、馬君を抱きしめました。涙があとからあとからこぼれてきます。僕の心は、恥ずかしさでいっぱいでした。自分が、知らないうちに、そんなにもひどい仕打ちをしていたなんて、思いもしなかったのです。

「いいよ、そんなこと。誰だって、君の立場ならそうするさ。ねえ、僕の人形はどうしているの。やっぱり、僕のことを見守っていてくれるのかい。会いたいよ。ひとめだけでいいから、僕も会いたいよ。」

馬君は、やさしく言いました。

「僕は、君の人形のことは知らないんだ。でも、きっと君のことを見守っていてくれるよ。だから、一年に一度でいいから、思いだしてあげてほしいんだ。それだけで、みんなとても喜ぶから。」

僕は馬君を抱きしめたまま、何度もうなずきました。

「馬君、君の言うとおりにやってみるよ。」

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