第15話

 僕は馬君の話を聞いていて、胸が締め付けられるような思いをしていました。そうです。僕にも、そんなお気に入りの人形がいたんです。そして、ああ、なんということでしょう。僕は彼の話を聞くまで、その人形のことを一度も思い出さなかったのです。

 「ねえ馬君。人形達は、きっと僕達のことを恨んでいるだろうね。」

馬君は、静かに首を振りました。

「いや、そんなことはないよ。みんな今でも君達のことを、とても愛しているんだよ。だから「忘れられた人形の国」から、いつも君達のことを見守っているんだ。君達の幸せを心から祈りながらね。

 でも、中には、それだけではどうしても我慢できなくなるものもいるんだ。どうしても、もう一回あのこのそばに行きたい。そう思うものもいるんだ。ちょうど今の僕みたいにね。

 それで、神様にお願いしに行ったんだ。そうしたら、神様はこうおっしゃった。

 『もし、おまえのその醜い傷口をもとどおりになおしてくれる者がいたなら、 一年間だけ、おまえを人間の世界にもどしてやろう。その間に、おまえの愛する者が、おまえのことを思い出したなら、ずっとその者といられるようにしてやろう。』。」

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