第14話
しばらくして、馬君が言いました。
「あと一週間で彼女の誕生日だってこと、知ってるかい。」
僕は驚いて顔をあげました。
「誕生日のプレゼントに、僕を渡すといい。そして、思いきって君の気持ちを打ち明けるんだ。」
「大丈夫、あのこはきっと気にいってくれるよ。」
その一言には、あの初めて話した夜のように、悲しみと憧れのいりまじった、なんともいえない不思議な気持ちがこめられていました。
僕は顔をあげると、馬君を見つめました。
「ねえ、君はいったいなにものなんだ。どうして彼女のことを、そんなにくわしく知っているんだ。君に話したのは、今日が初めてのはずだよ。」
馬君は、ため息をついたようでした。
「僕は、あのこのお気に入りの人形だったんだ。」
びっくりして口も聞けないでいる僕をみながら、馬君は静かに話し始めました。
「ねえ、人形は、最初から心を持っているわけじゃないんだ。持ち主が本当に気に入ってくれなければだめなんだ。お気に入りの人形は、持ち主といつも一緒にいるうちに、少しずつ命を吹き込まれて、いつのまにか心を持つようになるんだ。僕がそうなったとき、とてもうれしかった。そして、あのこといつも一緒にいられて、毎日毎日がとても楽しかった。あのこに会えなくなる日がくるなんて、考えることもできなかったよ。
だから、僕がいつのまにかぼろぼろになって、あのこに忘れられてしまったときは、とても悲しかったんだ。もう二度とあのこに会えないんだと思ったとき、僕の心は悲しみで張り裂けてしまった。そして、僕が体から抜けでると、神様がいらっしゃって、僕を「忘れられた人形の国」へ連れていってくださったんだ。
そこには、僕と同じような人形達がたくさんいたんだ。だって、世界中の子供達の数と同じくらい、そんな人形はいるんだものね。」
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