第13話
馬君は僕の話を、長い間じっと聞いてくれました。そして、僕の前に浮き上がると言いました。
「君の心は、本当にこわれてしまったのかい。」
僕は暗い気持ちでうなずきました。
「よし、じゃあ本当に君の心がこわれてしまっているのかどうか、僕が確かめてあげるよ。」
僕はびっくりしました。
「そんなことができるのかい。」
「うん。さあ、僕を信じるんだ。横になって、僕とおでこをくっつけるんだ。」「さあ、目を閉じて、体の力を抜いて。」
僕は言われたとおりにしました。馬君が僕の額にふれると、僕はすうっと気が遠くなりました。
どのくらいの時間、そうしていたのでしょうか。はっと目が覚めると、目の前に馬君がいました。
「大丈夫。君の心はこわれていないよ。」
「でも・・・」
言いかける僕を制して、馬君は言いました。
「よく聞くんだ。君はこわがっているだけなんだ。君はおそろしさに立ちすくんでしまっているだけなんだ。
君は失恋したときに、自分で思っているより深く傷ついてしまっていたんだね。君は、自分が心を開いたひとを、もしまた失ってしまったら、もうその打撃には耐えられないと思っているんだ。
たしかに、この世で一番おそろしいのは愛するものを失うことだと思う。だから、君がもう二度とそんな思いをしたくないと思って背を向けてしまったのも無理ないかも知れない。でも、逃げてばかりじゃどうしようもないだろ。
さあ、勇気を出すんだ。大丈夫、君の心はこわれてなんかいないよ。」
僕は力なく首を振りました。
「だめだよ。人間にはできることと、できないことがあるよ。」
「じゃあ君は、ずっとそんな気持ちのままでいいっていうのかい。そんなことしていたら、君の心は本当にバラバラになってしまうよ。そうしたら君は死んでまう。それでもいいっていうのかい。」
僕はうなずきました。
「バカ!そんなこと考えちゃダメだ!いいかい。だいいち、彼女が君のことを好きか嫌いかも、まだわからないんだろ。このまま死んでしまうくらいなら、せめて答えを聞いてからでも遅くないじゃないか。さあ、勇気を出すんだ!」
僕は、うなだれたまま黙っていました。
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