第12話

 そして、なお悪いことに、人事異動で、僕は別の課にまわされることになってしまったのです。同じ職場の中とはいっても、もう一緒に仕事をする機会はありませんし、話す機会もうんと少なくなってしまいました。ただでさえ、なんとなくギクシャクしていて悩んでいたのに、どんどん僕からはなれていってしまう彼女をどうすることもできず、僕はだんだん落ち込んでいきました。おまけに、初めての仕事になかなか馴染めず、ひどく疲れているせいもあって、夜もよく眠れず、食欲もなくなってしまいました。

 職場ではみんなの手前もあり、一応取り繕ってはいますが、家に帰るともうそんな余裕はありません。以前のように馬君とおしゃべりするのさえ、おっくうになってしまいました。日に日に無口になり、落ち込んでいく僕を見かねて、とうとう馬君が言いました。

 「ねえ、どうしたの。ここんところずっと様子がおかしいよ。いったいなにがあったんだい。僕でよかったら話してごらんよ。なにか力になれるかもしれないよ。」

その一言で、張りつめていたものがぷつんと切れてしまったようでした。馬君に話しても、なんにもならないことはわかっていたのですが、いつのまにか僕は胸の中の思いをすべて馬君にぶつけていました。

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