第10話
「やっと帰ってきたね。とてもさみしかったんだよ。」
ドアを開くと、いきなりそんな声が耳にとびこんで来ました。あわてて電気をつけると、足もとに、あの馬の人形が立っていました。僕はいっぺんにきのうの晩のことを思い出しました。
「それじゃあ、あれは夢じゃなかったんだね。」
「そうだよ。僕は君に助けてもらって生きかえったんだ。」
「ねえ、こんなこともできるんだよ。」
そう言うと、馬君はふわりと浮かび上がって、部屋の中を飛びまわり始めました。さすがに本物の馬のようにとはいかないものの、そのうれしそうにはしゃいでいる様子は、みていてもとても楽しいものでした。あんなに心から楽しくなるような光景をみたのは、本当にひさしぶりのことでした。
楽しい?
そうです。不思議なことに、僕にはとてもこの馬君がおそろしいものだとは思えなかったのです。人形がしゃべったり空を飛びまわったりするなんて、たしかに普通じゃありません。まともに考えれば、とても不気味なことだと思います。でも、僕には全然こわいとは思えなかったのです。いや、それが不思議なことだとさえ思えなかったのです。きっとそれは、あの拾い上げた時のなんとも言えないほど悲しげな顔が、本当にうれしそうなものに変わっていたからなのでしょう。
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