第7話

 僕は耳もとでしつこく繰り返す、

「起きろ!起きろ!」

と言う声で、目が覚めました。

「うるさいなあ、まったく朝っぱらから。」

そう思いながら、寝ぼけまなこで時計をみたとたん、いっぺんに眠気がふっとびました。なんと三十分もねぼうしていたのです。

「大変だ!」

僕はとび起きると、おおあわてで仕度を始めましたが、途中でふと気が付きました。

「いったい誰が起こしてくれたんだろう。」

そう思ったときです。いきなり耳の中で声がしました。

「僕だよ。きのうは助けてくれて、どうもありがとう。」

 僕はとびあがるほどびっくりしました。だって僕は一人暮しで、この部屋には、ほかには誰もいないはずです。思わず部屋中をみまわしましたが、やはり誰もいません。それでもキョロキョロしていると、

「ここだよ、ここ。君の足もとさ。」

またそんな声がして、僕は思わず足もとをみおろしました。

 そこには、きのう拾ってきた馬の人形がいました。でも、それはきのうの、あのうすよごれてくたびれた人形ではありませんでした。まるで買ってきたばかりのように、きれいでりっぱにみえました。僕はあわてて人形を手にとりました。

「いてて、そんなに乱暴にしないでよ。」

僕はあっけにとられて、人形を目の前にもってきました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る