第6話

 そんなときでしたから、この人形のこわれたハートは、よけいに胸にこたえました。僕はそっと、その小さな赤いハートをとりだしました。

「かわいそうに。僕がなおしてあげるからね。」

 僕は針と糸を持ってきて、できる限りもとの形にもどるように、細心の注意を払いながら、修理を始めました。もともと針仕事などあまりやったことはありませんし、かなり細かい仕事なので、なかなかうまくいきません。何度やめようかと思ったかわかりませんが、それでも夢中でやっているうちに、なんとか満足のいくできばえになりました。

 ふと気が付くと、もう外は明るくなっていました。僕はあわてて時計をみました。

「あれっ。もうこんな時間だ。」

 僕は人形を枕元におくと、あわてて布団にもぐりこみました。ひどく疲れていたせいか、僕はあっというまに眠ってしまいました。

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