第73話 おっさん、収容所を解放する

 ダンジョンでクラン・ラベレンの下っ端を始末する仕事に戻った。

 始末する時に何か情報が無いか確かめてから殺す事にしている。


「助けてくれ!」

「なら、情報を話せ」

「俺はこの後、逃げた村人を始末する予定だった」

「何っ! 奴隷にさらわれた村人か? 詳しく話せ」


 俺は詳細な事を聞き出した。

 村人は街のスラムに隠れているらしい。

 俺は情報を信じてその街に飛んだ。


 たしか、ここだな。


「キシシ、もう逃げられませんよ」


 この声はラーク。

 奴も来ていたのか。

 どうやら、先を越されたようだ。


 部屋に踏み入る。


「フヒッ、あなたと出会うとは」

「御託は良い。掛かってこい」


 ラークは毒らしき物を撒いた。

 魔力壁に対する手段としては正しい。

 魔力壁を展開していても呼吸はしているからな。


 でも、そんなのは対処済みだ。

 ガスマスクを被る。

 皮膚から浸透する毒でなければこれで平気なはずだ。


「俺の番だ。拘束バインド


 ドライアイスを出して氷魔法を使う。

 ドライアイスのロープはラークを捕らえた。

 メイスで身動きが出来なくなったラークの頭をかち割る。


 ラークは即死した。

 下っ端が逃げ出そうとしたが、アルマ達に切り刻まれる。

 俺は逃げてきたであろう村人と向き合った。


「お前ら、俺をどうするつもりなんだ」


 村人は震えている。


「助けに来たんだよ」

「信じられるか。マーロウさんの仲間じゃない限りはな」


 はて、マーロウの名前が何で出て来る。


「マーロウって駆け出し冒険者のマーロウか? スラム出身で月光に光る刃の?」

「ああ、そうだ。あんたら知り合いなのか。いや信じないぞ。マーロウさんの敵だろう」


 俺はマーロウを探しているというスラムの子供達の名前を出した。


「その子供達の名前はマーロウさんから聞いている。あんたらを信じよう」

「単刀直入に聞く。奴隷を集めている場所はどこだ」

「フィーレス領にある領都の外れだ」


 遂に突き止めたぞ。

 それは良いとして、マーロウの奴は何をやってるんだ。


「マーロウとはどこで知り合った」

「村に依頼で来ていて、盗賊に一緒に捕まった。隙を見て一緒に逃げたんだ」


 駆け出し冒険者らしいな。

 盗賊に捕まっちまうとは。

 捕まって逃げ出せるところは運が良いのか悪いのか。


 子供達には悪いがマーロウは放っておこう。

 クラン・ラベレンに捕まったら助け出すつもりはあるが、とりあえずは放置だ。


 奴隷の収容所を襲うとするか。

 と言っても正面突破だけどな。


 俺達は収容所に行った。

 門の前に立つ。


「ここはフィーレス子爵様所有の建物だ。関係ない奴は去れ」

「関係ならある。村人の救出を依頼されたからな」

「お前。敵襲! 敵襲!」


 俺はメイスで門番の頭をかち割り建物の敷地に入る。

 中は粗末な住居が建ち並んでいる。


「助けに来たぞ!!」


 村人らしき人がわらわらと出て来る。


「逃げたらどうなるか、分かっているのか!」


 子爵の手下らしき奴が現れて村人を住居に戻らせようとした。


「死んどけ」

「かふっ」


 村人達の首には奴隷の首輪がはまっている。

 前に正規に奴隷を持っていた俺だから分かるが、この首輪は正規品ではない。

 要するに違法奴隷という訳だ。


「俺は逃げるぞ。奴隷なんか真っ平ごめんだ」

「よし首輪を千切ってやる。並べ」


 俺は強引に首輪を千切った。

 首輪の防御機能で俺の手に電撃が走るが、魔力壁でどうという事はない。


「わたしも」

「俺もだ」


 村人は自由になると、暴動に近い状態になった。

 俺は手下どもを見つけるとメイスで殴った。

 村人たちが手下の身ぐるみを剥ぐ。

 武器を手にした村人は手下に襲い掛かった。


 ここからが大変だ。

 手下は制圧できるだろうが。

 フィーレス子爵は軍隊を出してくるはずだ。

 まあ、策ならある。

 俺は転移陣を設置した。

 運用の魔力はどうするかだって?

 それは死んだ手下共を生贄に魔力に変えるだ。

 人間を生贄に奉げるのはやりたくないが、緊急事態なので目を瞑ろう。


 村人達が転移して逃げる。

 転移した先では冒険者登録するように言ってある。

 冒険者が何人も行方不明になると調査が入る。


 フィーレス子爵も始末するのに二の足を踏むだろう。

 そして、村人には情報提供としてフィーレス子爵のやった事をギルドに報告するように言ってある。

 大量に村が襲われたという証言があがれば、ギルドも重い腰を上げざろう得ない。

 ギルドには国に干渉するくらいの力はある。

 要はやる気があるかないかだ。


 しばらくギルドのお手並み拝見だな。

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