第74話 おっさん、救出パーティを結成する

 ダンジョンでクラン・ラベレンの下っ端を始末する仕事も少なくなった。

 下っ端を見かける事が少なくなったからだ。

 用心しているのも知れない。


 もっともダンジョンでは死体が残らないから、生き残りが居ない限り何があったかは分からない。

 何人かは情報を取って逃がしたから、俺の事がばれている可能性もある。


 ダンジョンコアを使った監視は続けるけどな。

 ある日、クラン・ラベレンの下っ端を見つけた。

 なんと冒険者を拉致している現場だった。


 おいおい、手段を選ばなくなったな。

 とうぜん阻止するべく現場にワープした。


「お前だな。俺達を襲っている奴は。お前を倒してクランマスターから金貨千枚を頂いてやる」

「起きてて寝言を言うな」


「ぶべっ」

「ぐがっ」

「どわっ」


「おい、大丈夫か」

「ありがとうございます。どこかでお会いした事がありませんか?」


 袋から出した冒険者は収容所から逃がした村人だった。

 なるほどな。

 奴らダンジョンの中で捕まえようと思ったのか。


「気をつけろよ」

「はい。仲間にもダンジョンには近づかないように言っておきます」

「そうだな。それが良い」


 これで拉致が終わると思ったら、奴らは関係ない冒険者も標的にし始めた。

 本当に見境がなくなっているな。


 俺は拉致から助けるべく奔走したが、大規模にやられると手が回らない。

 こりゃ、何か手を考えないと。


 そして、ある日、少女を助けた


「ありがとう」

「いや良いんだ」

「名前を聞いてもいい?」

「ムニだ」

「私はオリヴィエよ。よろしく」

「オリヴィエはソロなのか?」

「ええ、男だけのパーティだと男達に変な目で見られるし、女性の冒険者は少ないから」

「これに懲りたらパーティを組むんだな」


「相談なんだけど、あなたのパーティに入れてくれない?」

「また何で?」

「女性が三人もいるし。あなたは男だけど、良い人みたいだし」


 どうやって断ろう。


「三人は俺の嫁だ。だから、ちょっとな」

「いちゃついても、少しぐらいなら許容するわ」


 うーん。


「入れてあげたらどない」


 アルマはそう言うけどな。

 何か理由がありそうだ。

 それは分からないが、損になる事ではないのだろう。

 アルマがそう言うなら、仕方ない。


「分かった。パーティに入れるよ。今、俺達はダンジョンでの拉致を阻止する方向で活動してる」

「立派なのね」

「それほどでもない。まあ成り行きだな。それより、色々と説明する事がある」


 ダンジョンコアの部屋にオリヴィエを招いて、監視の実態を見せた。


「ダンジョンを支配下に置くなんて、凄いのね」

「これは秘密だぞ」

「分かっているわ。考えたんだけど、拉致されるのはソロの冒険者よね」

「大体そうだな」

「彼らを集めて救出パーティを組んだらどうかしら」


 なるほどね。

 手が足りてないし、いい案かもな。


 俺達は拉致された冒険者を勧誘し始めた。

 賃金をある程度保障すると二人に一人は頷いてくれた。

 順調だ。

 俺はダンジョンコアの部屋で救出パーティをワープするだけの仕事をこなす。

 監視も人が居ると色々と手が回るので助かっている。


「スライム・ダンジョンで拉致事件発生」


 オペレーター役の冒険者が俺に報告する。


「よし、救出パーティ頼んだぞ」

「「「「はい」」」」


 パーティをワープさせた。


「さきほどの現場で劣勢です」

「よし、追加でもう1パーティ送ろう」


 こんな感じで俺は仕事をこなしている。

 オリヴィエは精力的に活動して救出パーティをまとめてくれた。

 救出パーティのリーダー達を集めて会議をする事にした。


「さて、諸君。拉致阻止活動、ご苦労様。おかけで拉致だけでなく、ダンジョン内の犯罪が皆無になった。そろそろ反撃にでたい」

「いよいよ、クラン・ラベレンとフィーレス子爵を叩き潰すのね」

「ギルドに訴状を提出したら、拉致された人達を救出しよう」


 いよいよ、最終決戦に向けて動き出した。

 収容所の場所も分かっているし、助けた冒険者に武器を渡せば勝手にやってくれるだろう。

 しかし、馬鹿だよな。

 冒険者を拉致するなんて。

 ダンジョンで行方不明になれば、原因が追究されにくいとしてもだ。


 クラン・ラベレンの連中は、拉致が阻止されているというのに、対策をしない。

 対策を考える策士がいないのかもな。

 フィーレス子爵側は貴族にギルドの力が及ばないとでも思っているのかもしれないな。

 油断していてくれるのなら有難い。

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