第48話 おっさん、奇襲する
俺が同盟の為にやった事は、人工宝石を色々な人に贈った事ぐらい。
話を聞いてくれる人もいたが、どの人も同盟には後ろ向きのようだ。
中々上手くいかないな。
だが、グエルオアシスは突然、各オアシスに宣戦布告ともとれる文章を送ってきた。
なんでこうなったかと言うと、俺が魔力をちょろまかしていたからだ。
経緯はこう、オアシスの民衆に魔力を貰って、魔力通販で物を買う訳だが。
この時に2割ほど魔力をちょろまかした。
その魔力で俺は缶詰、酒、肉製品を買い各オアシスのアタンの店に卸したのだ。
グエルはアタンの店の商品がどこから出ているのか、血眼になって探していたらしい。
ところが突然、各オアシスの店に品物が現れた。
グエルの人間は、抗議文を送ったオアシスが、品物の製造に関与していると睨んだみたいだ。
関与しているかとなると、品物を作る魔力は各オアシスの民衆のだから、関与している。
各オアシスの有力者は寝耳に水だったみたいだが、喧嘩を売られたら買わない訳にはいかない。
俺の予期しない事で同盟はなった。
陰謀を巡らせたわけではないが、事がなってしまった。
そして、グエルは味方のオアシスを2つ追加して5つのオアシスの連合軍。
俺の方は9つのオアシスの連合軍だ。
数では俺らの方が勝っている。
この時点で勝ったなと思わないでもない。
現在、互いに陣を構えて睨み合っていた。
「軍議を始める」
一番年寄りの代表者が議長を務めるらしい。
「こちらの数が多いので軍議の必要などないだろう」
「いや、そう上手くもいかない。相手の布陣を見たか」
「グエル連合軍は、サンドワームの群棲地を背に背水の陣だろう」
「そうだ、そして矢じりのような陣形を取っている。狙いは我らの陣を突き抜けて、群棲地と挟もうというわけだ」
「陣を厚くすれば突破されないだろう」
「しかし、奴らは死兵だ。物凄い損害がでるぞ。楽勝気分が一転して負け気配になるかもしれん」
「それは上手くないな。戦に絶対はない。楽勝気分は変えられないし、どうしたものか」
「案がある。軍を二つに分けて、挟み撃ちにしよう」
俺はそう提案した。
「それはサンドワームの群棲地を突っ切るって事だよな」
「秘策がある。軍の一割を俺に預けてくれれば、背後からの奇襲を成功させる」
「同盟の立役者のエックス殿はこう言っているがどうだ」
「やらせてみても良いんじゃないか」
「では決を採ろう」
「賛成」
「反対」
「賛成」
「やらせてやれ」
「賛成よ」
「賛成」
「反対」
「賛成」
「俺も賛成だ」
どうやら俺の案が通ったようだ。
この作戦は俺が考えた訳じゃない。
義経の鵯越の逆落としを参考にした。
現れるはずのない背後からの強襲。
上手くいくはずだ。
俺達は深夜こっそりと敵軍の背後に移動した。
背後と言っても間には群棲地があるがな。
夜が明け戦闘が始まる。
俺達はラジコンを出して走らせた。
地表に出て来るサンドワーム。
サンドワームは胴回りが2メートルはあろうミミズのモンスターだった。
強襲軍は火炎瓶を投げて撃退。
「よし、サンドワームはもう出て来ない。走るぞ」
モレクを走らせ、群棲地を抜けた。
「突撃!」
「母の仇」
「家族をよくもやりやがって」
「お前らを許さない」
人質を殺された元敵兵士は死に物狂いで戦う。
「なにっ、背後からだと!」
敵陣はパニックになった。
もう指揮は隊長達に任せておけば良いだろう。
敵の首領であるバラムはどこだ。
俺は魔法を使い敵兵をなぎ倒し、敵陣深く攻め入った。
バラムはモレクにまたがっていた。
野郎逃げるつもりだな。
「バラム、逃がさん!」
「ひょひょひょ、さらばだ」
バラムはなんと爆竹を投げた。
鹵獲品かスパイの横流し品だろう。
爆竹が爆発する。
敵味方を問わずモレクが暴れた。
「くそっ、逃がしたか」
まあ良い。
どうせ、行先はグエルオアシスだろう。
追いかければ、追いつけるはずだ。
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